移籍専門記者による強化部門解説|チェルシー編「ディレクターのマリーナ女史はタフな交渉相手として評判」

2015年12月30日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

最終的な決定を下すのはディレクターのマリーナだ。

12月にモウリーニョを解任してヒディング(左)を暫定監督に指名したアブラモビッチ(右)は、今冬のマーケットで大きなテコ入れを画策しているようだ。(C)Getty Images

 今年12月17日に解任されるまで、強化戦略についての権限は、公式にはジョゼ・モウリーニョ監督にあった。
 
 しかし、予算を握り実際の移籍交渉を担当して、移籍金や契約内容について最終的な決断を下す立場にあるのは、オーナーのロマン・アブラモビッチの側近であるディレクター、マリーナ・グラノフスカヤ女史だ。
 
 監督の意向を汲むだけでなく、自身もオーナーの考えに沿う形で補強戦略そのものにも積極的に関与している。チェルシーに出入りしている代理人の誰に話を聞いても、マリーナは優秀でタフな交渉相手だと口を揃えるなど、彼女の権力と影響力の大きさが伝わってくる。
 
 長年、大物代理人のジョルジュ・メンデスとの密接な関係が取り沙汰されてきたが、近年はむしろ群雄割拠の感がある。セルビア人のヴラド・レミッチやファリ・ラマダーニ、イタリア人のフェデリコ・パストレッロといったエージェントもそれぞれマリーナに食い込んでいるからだ。逆に近年は、メンデス絡みのオペレーションは目につかなくなっている。
 
 ちなみに、モウリーニョ、アブラモビッチ、マリーナの関係も、かつてほど密接なものでなくなっていた。2015年夏のCB補強についても、モウリーニョはアイマン・アブデヌール(モナコ→バレンシア)、アブラモビッチはコンスタンティノス・マノラス(ローマ)かメディ・ベナティア(バイエルン)をそれぞれ欲しがったが、最終的には予算的な制約もあってパピ・ジロボジの獲得に落ち着いた。その決断を下したのもマリーナだった。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
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