移籍専門記者による強化部門解説|レアル・マドリー編「相変わらずペレス会長のワンマン体制だ」

2015年12月29日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

2015年夏は少しばかりいつもと事情が違った。

いまやペレス会長(右)は、スポーツディレクターの役割も担っている。右腕的存在のホセ・アンヘル・サンチェスを従えて、移籍交渉を直接手掛ける。(C)Getty Images

 メルカートの全権は相変わらずフロレンティーノ・ペレス会長の手中にある。戦力的な要請とマーケティング的要請を巧みに組み合わせて、毎年必ずと言っていいほど目玉となるスター選手を獲得してきた手腕には定評がある。クラブのステータスと資金力が傑出しているゆえ、狙ったターゲットを獲り損なうケースは滅多にない。
 
 ただ、2015年夏は少しばかりいつもと事情が違った。補強の目玉となるはずだったダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)の獲得に失敗。レギュラー級の新戦力はダニーロとレンタルバックのカゼミーロのみと、比較的大人しい夏を過ごしたのだ(マテオ・コバチッチは控えに甘んじている)。結果的に、市場の目玉はラファエル・ベニテス新監督となった。
 
 そのベニテスは、補強戦略にも積極的に関与したいイングランド型マネジャー・タイプの監督で、リバプールやナポリでは自身の代理人マヌエル・ガルシア・キロンを動かして複数の移籍オペレーションを実現。しかし少なくとも現時点では、ジョゼ・モウリーニョやカルロ・アンチェロッティら前任者たちと同様、発言権は大きくない。
 
 クラブの生え抜き監督の抜擢により活気をもたらそうというペレスの狙いは、ここまで成功しているとは言い難い。ピッチ上の結果とは裏腹に、チームはいくつかの派閥に分裂するなど、ベニテスは完全にチームを掌握しているとは言えない。
 
 今後の補強戦略にベニテスがどれだけ関わってくるかは、結果やチームマネジメントも含めてクラブ内でどれだけ存在感を高められるかにかかっているだろう。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2015.11.19号より加筆・修正
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。父は70~90年代にナポリ、ジェノア、レッチェなどで監督を歴任し、現在はTVコメンテーターのジャンニ・ディ・マルツィオ。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。父を通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
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