清水では左SB、阪南大ではCB。高木践が与えられたポジションを心の底から楽しめるワケ「僕は学びたい気持ちが強い」

2023年05月30日 安藤隆人

チームを救う超絶な美技を披露

阪南大のDF高木。サイズはないが、抜群のバネを持ちヘッドも強い。写真:安藤隆人

 特別指定選手としてプレーする清水エスパルスでは左SB、阪南大ではCB。高木践は2つの顔を持っている。

 関西学生リーグ1部の第7節・びわこ成蹊スポーツ大戦で、高木は高校時代からずっと定位置となっているCBでスタメン出場。鋭い目つきでボールと人の動きを見ながら、巧みなポジショニングと身体の向きを作る。こまめにステップを踏み、相手の裏へのボール、クサビのボール、そしてハイボールに対応する。

 圧巻のプレーを見せたのが、2-1のリードで迎えた65分だ。びわこ大がカウンターを繰り出した場面で、ボールを持ったFW工藤真人と並走したFW石橋克之に、阪南大は高木1人という完全な数的不利の状況を作られた。

 このピンチに、高木は非常に冷静だった。工藤がドリブルを仕掛けてきたのに対し、高木は半身になりながらコースを切った。その瞬間、工藤は石橋にスルーパスを送り込む。

 糸を通すように石橋が走り込むスペースにボールが走り、GKと1対1になると思った瞬間、高木が鋭いターンから完全に読み切った形で、石橋とボールの間に斜めのランニングで割って入ってブロック。スルーパスは阪南大GK市川泰壱の両手に収まった。まさにチームを救う超絶な美技だった。
 
 その後も高木の守備の存在感が際立ち、チームはそのまま2-1の勝利を飾った。試合後、このシーンについて本人に聞くと、すらすらと解説の言葉が出てきた。

「あの局面は完全に2対1だったので、9番(工藤)がドリブルから打ってくるか、パスをするかのどれかの状況でした。もし、あそこでもう一個前にボールを運ばれていたら、そのまま9番に行こうと思ったのですが、パスを選択してきたので、すぐにターンに切り替えて(石橋とボールの間に)うまく身体を入れることができたという判断です」

 CBとしての能力が非常に高いのは、これまでのプレーで実証済み。173センチとサイズはないが、抜群のバネを持ち、ヘッドも強い。関西学生選抜、全日本大学選抜にも選ばれるなど、関西屈指のCBであるが、来季からの加入内定が決まっている清水での役割は、冒頭で触れた通り、CBではなくサイドバックだ。

「小学校の時に少しやったくらいで、ほぼ初めてのようなものです」と語るように、SB経験はゼロに等しい。しかしそのポジションで、すでにJ2リーグのレノファ山口FC戦で、途中からピッチに立ちリーグデビュー、ルヴァンカップでは2試合にスタメン出場を果たしている。

「僕はもともと身長がないので、このままずっとセンターバックでいくとは思ってはいませんでした。この先(プロ)はセンターバックとしてでは無理だと思っていたので、サイドバックで勝負することになるだろうなとは予想はしていました。なので、エスパルスでサイドバックと言われても驚きはありませんでしたし、それ以外のポジションでもやる準備もできていました」
【PHOTO】名場面がずらり!厳選写真で振り返る"Jリーグ30年史"!

次ページ「そのポジションをきっちりと全うするだけ」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事