「昔より優しくなったのかな(笑)」元代表経験者監督が集結するJ3で福島・服部年宏監督はいかにして“自分の色”を出すのか?

2023年05月27日 元川悦子

「福島で教えるようになって感じるのは…」

J3福島を率いる服部監督。2年目のシーズン、“服部色”を出そうと奮闘している。(C)Fukushima United FC

 2023年、J3はアスルクラロ沼津の中山雅史監督、SC相模原の戸田和幸監督を筆頭に、日本代表としてワールドカップ(W杯)を経験している有名指揮官が数多く名を連ねている。

 とはいえ、これまで代表レジェンドがJリーグの舞台で成功した例は少ない。目覚ましい成果を挙げているのは、サンフレッチェ広島でJリーグを3度制覇し、日本代表監督としても2022年カタールW杯でドイツ、スペインを撃破する快挙を成し遂げた森保一監督と、ガンバ大阪で3冠、FC東京でもルヴァンカップを獲った名古屋グランパスの長谷川健太監督くらい。現実はかなり厳しいと言っていいだろう。

 福島ユナイテッドFCで2年目の服部年宏監督も「理想と現実のギャップ」に苦しんでいるというのは前回も書いた。が、彼なりに師事してきた指導者の良い部分をミックスしながら、「服部色」を出そうと奮闘している。

「日本代表時代は岡田(武史=JFA副会長)さんや(フィリップ・)トルシエ(ベトナム代表監督)、ジュビロ時代も個性豊かな監督の下でやってきましたけど、そういう指導者と全く同じような伝え方をすればいいわけではない。選手の個性やバックグラウンド、レベルに応じた指導法があると思っています。

 僕は現役時代の終盤にガイナーレ鳥取やFC岐阜に行きましたよね。その時の経験がすごく大きいんです。激しく鼓舞したり、怒ったり、要求したりするだけじゃ伝わらないことも多かったし、相手のキャラクターや考え方などによって話し方や言い方を変える必要があった。今の福島でもそうなんです。いろんな環境に行って、さまざまな出会いをしたことで、僕自身、昔より少しは優しくなったのかな」と服部監督は笑顔を見せていた。
 
 代表やジュビロ磐田時代の服部監督を思い返してみると、言うべきことをハッキリ言うタイプで、チームメイトと意見をぶつけ合う場面も少なくなかった。特にトルシエジャパン時代は、松田直樹、森岡隆三(清水エスパルスアカデミーヘッドオブコーチング)戸田、中村俊輔(横浜FCコーチ)といった自分の意見を堂々と口にする選手が揃っていたため、服部監督が語気を強めても全く問題なかった。

 しかしながら、今の若い世代はメンタル的に繊細で、自己主張をしないと言われる。その反面、サッカーにまつわる情報を沢山持っていて、頭でっかちになりがち。少しプライドの高い部分もあるだろう。そういった傾向を踏まえながら個々と向き合い、良さを伸ばしていくのが指導者にとって重要なのだろう。

「福島で教えるようになって感じるのは、自己評価が意外と高いという点。それを指摘されて、素直に受け入れて取り組み方を変えたり、自分の足りない部分に気づくような選手は伸びていきますね。昨季だと橋本陸(相模原)なんかがそうでした。グッと成長してくれると僕も嬉しくなるし、やりがいも感じる。そこが指導者のだいご味なんだと思います」と服部監督は顔をほころばせる。

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