ガンバ再興への道|理想の顔ぶれが未だに見えてこない。ジェバリは上手いが点取り屋としては“怖くない”、宇佐美の処遇は…[番記者の見解]

2023年05月26日 下薗昌記

残されたのは「支配する」とは無縁の数字

G大阪は14試合を消化して1勝4分9敗。リーグ最下位に低迷している。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ガンバ大阪が苦境に陥っている。14試合を消化し、1勝4分9敗。目下5連敗中で最下位に沈む。西の雄は巻き返せるのか。サッカーライターの下薗昌記氏に見解をうかがった。

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「圧倒的に支配するサッカー。攻守において」

 今季開幕前の2月上旬、宇佐美貴史はダニエル・ポヤトス監督とともに作り上げる新たなスタイルについて、こう言い切っていた。

 昨シーズンの堅守をベースに辛うじてJ1残留を果たした松田浩前監督(短期間での守備構築は見事の一言だった)のもとで作り上げたスタイルとは180度異なり、ボールを握るのに主眼を置くのがポヤトス監督の方向性だ。

「自分自身は支配するスタイルが好き。そのためにはボールを持つ、そうすることで試合をコントロールする感触を得られる」(ポヤトス監督)

 しかし、14試合を終えて、昇格組の横浜FCの後塵を拝し、最下位に低迷するばかりか、得点数はリーグワースト3位、失点数もワースト2位で「支配する」という言葉と無縁の数字だけが残されている。

 あくまでも降格枠が1つという今季のレギュレーションが大前提ではあるが、G大阪が残留争いから抜け出すのはまだ、可能だと考える。

 来季以降、優勝争いをするには選手の質、量ともに更なる上積みが必要であるのは言うまでもないが、例え降格枠が昨季と同様であっても、少なくとも残留争いに身を投じる選手の顔ぶれではないはずだ。
 
 ピッチ内での結果だけでなく、筆者が重視するのは日々の囲み取材における指揮官の発言内容だ。この先、指揮を執っても未来はない、と早々に感じさせたかつてのセホーン氏(その実態は呂比須ワグナー監督だったが)やレヴィー・クルピ氏に感じた絶望感は、今のところ、ポヤトス監督に感じることはない。

 通訳を挟むこともあって、毎回、30分近くに及ぶ試合前の囲み取材には論理性も感じるし、G大阪を成長させたいというパシオン(スペイン語で情熱)にもみなぎっている。

 実際、ピッチ内でも2点のビハインドを追いついた第5節・札幌戦(2-2)の2得点は、ポヤトス監督が目ざすスペースを意識した再現性のある崩しを見せるなど、近年のG大阪になかったゴールが生まれているのも事実である。

 ただ、スペイン人指揮官に問題がない訳ではない。

 かつてG大阪で最初の黄金期を作り上げた西野朗監督(当時)は、チームのスタイルを問われるたびに「キャスティング」というキーワードを口にした。

 アンカーを配置する4-3-3を基本布陣に据えるポヤトス監督ではあるが、14試合を終えて、未だにチームの理想の顔ぶれが見えてこないのだ。

 日本の伝統的な遊びである「福笑い」さながら、輪郭は定まっているものの目・鼻・口をああでもない、こうでもない、と模索しているのが今のG大阪のように見える。
 

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