躍動感あふれるプレーで首位の神戸を圧倒!レイソル井原新監督がもたらしたマインドの変化。「顔色をうかがっていた」選手を解放した言葉とは?

2023年05月21日 鈴木潤

「ミスが起こっても、みんなでカバーしながらゲームを進めていこう」

初陣で首位チームを相手に勝点1を獲得した井原監督。写真:梅月智史

[J1第14節]柏1-1神戸/5月20日/三協フロンテア柏スタジアム

 5月17日の監督交代から、わずか4日。井原正巳監督は、試合前のミーティングでは、こう言って選手を送り出したという。

「ミスを恐れず、ミスが起こっても、みんなでカバーしながらゲームを進めていこう。積極的なミスはOKだけど、消極的なミスはやめよう」

 新指揮官の打ち出した方向性によって、各選手にチャレンジするマインドが生まれた。パスをつなぐことを恐れずに、自分たちがボールを動かしながら前進していくという、それまでの柏に足りないとされていた部分が随所に見られた。

 また、つなぐ意識を見せながらも、後半に高さとスピードのあるフロートを投入してからは、背後を突いたカウンターからも多くのチャンスを作り出した。

「(ポゼッションとカウンターの)両方をできるチームが強いチームだと思っていますし、カウンターができるのにしないのはもったいない」

 会見で口にした井原監督の言葉からは、ボールを握るスタイルとスピーディーに相手の背後を突くカウンターを、状況に応じて使い分けていくというチームの方向性が見えてくる。ただ、これはネルシーニョ前監督の目ざしていたものと変わらない。

 では、何が変わったのか。それは監督の選手へのアプローチの仕方である。

 17日に行なわれた井原監督、及び布部陽功GMへの取材では「選手が監督の顔色をうかがってプレーしていた」との言葉があった。
 
 ネルシーニョ前監督も選手がチャレンジすることを禁止していたわけではない。事実、大谷秀和コーチは現役時代に「ネルシーニョ監督は決してプレーを制限しているわけではなくて、言い方が強い分、受け取る選手が極端に受け止めてしまっている。相手に狙われている危ない状況でつなごうとすると強く指摘される。でもそこで選手が全部蹴った方がいいと思ってしまったら攻撃にならない」と言っていたことがある。

 さらに付け加えれば、ネルシーニョ監督第一次体制時にタイトルを獲得した選手たち、大谷をはじめ、北嶋秀朗、工藤壮人、近藤直也、増嶋竜也、田中順也らは「監督がチャレンジに対して何かを言うことはない。ミスをするから厳しく言われるのであって、プレーを成功させれば監督は何も言わない」と、当時よく言っていた。

 これらを踏まえれば、現チームの選手たちは、ネルシーニョ前監督からの要求や指摘を極端に受け止める傾向があったのだと推測される。それによってミスを恐れ、監督の顔色をうかがいながらのプレーを生んでしまったのだろう。

 そこで井原監督が「積極的なミスはOK」と明確に打ち出して、萎縮していた彼らのプレーを解放されることに成功した。

 柏の選手たちは躍動感あふれるプレーを見せ、首位の神戸を圧倒した。しかし裏を返せば、それでも勝てなかったわけだ。

 多くのチャンスを作っても仕留めきれず、たった一度のピンチで失点していては、今までとは何も変わらない。監督が代わっても、結局ピッチ上でプレーするのは選手たちである。

 井原監督体制の初戦は、今後へ向けて可能性を感じさせたのは確かだ。あとは選手それぞれが個々の課題を克服し、向上できるか。それが柏の浮上のカギになる。

取材・文●鈴木潤(フリージャーナリスト)

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