【岩本輝雄】フロンターレ、どうしちゃったの? どうにも拭えない停滞感。復活の原動力として期待しているのは…

2023年05月18日 岩本輝雄

10番のギアが上がってくれば――

多摩川クラシコで久々の敗戦。相手のハイプレスを前に後手に回ってしまった。(C)SOCCER DIGEST

 フロンターレ、どうしてしまったのか……。

 5月12日、「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」と銘打たれて、"聖地"国立で開催されたFC東京戦で1-2の敗戦。多摩川クラシコでは久々の黒星となった。

 4連勝がかかる一戦は、前半だけで2失点。宮代のゴールで1点を返したけど、反撃はそこまでだった。

 脇坂の退場で数的不利という状況もあった。それにしても、本来のフロンターレらしさを感じることができなかった。持ち前のボール回しも、どこかスムーズさを欠いている。

 たしかに、FC東京の連動したハイプレスは見事だった。それでも、テンポ良くボールを動かして、相手を剥がせるのがフロンターレの強み。それが、この日は後手に回って、思うようにポゼッションできない。

 厳しい言い方になるかもしれないけど、すべてにおいて、今のフロンターレは停滞しているように見える。かつての憎らしいぐらいの強さが影を潜めている。3連勝していたけど、1-0が2回。相手を圧倒していたわけではないよね。
 
 スイッチが入った時は、素晴らしいアタックを見せられる。宮代のゴールは凄かったと思うよ。瀬古の縦パスに上手く抜け出して、フィニッシュ。彼のスピードと得点感覚が発揮されたシーンだったけど、こうしたアクションも単発だった。

 個々の能力は高いけど、"点"が"線"につながっていない。中盤のトライアングルは、脇坂、シミッチ、瀬古。いずれも実力者だけど、どうにも距離感が良くない印象がある。中央が盤石でなければ、両サイドも生きてこないから、サイドバックの山根、登里も今ひとつ、前に出ていく迫力を欠いている。

 シーズンを重ねるごとに、主力選手が海外に挑戦したり、とりわけ今季は少なくない怪我人に悩んでいる。戦力面でパワーダウンしている部分はあると思う。そうした現実にどう向き合うか。

 期待したいのは、大島だ。負傷から復帰して、今はまだ途中出場が続いているけど、リーグ屈指のテクニシャンでもある10番のギアが上がってくれば、チームは好転していくのではないか。

 やっぱりフロンターレには、もっと魅力的なサッカーを見せてほしいし、強くあってほしい。近年のJリーグを引っ張ってきたチームが、今季はここまで13試合を終えて、5勝3分5敗。得失点差は、まさかのゼロ……らしくないよね。

 個人的には古巣だし、いちファンとして応援している。このままでは終わらないはず。巻き返しに期待したい。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、51歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

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