渡独後に“チェイス・アンリ”は表舞台から姿を消す。「強くないと戦えない」。もがき苦しんだ末のメンバー入り「U-20W杯で人生を変えたい」

2023年05月09日 松尾祐希

心と身体がマッチせず、壁にぶつかる

ドイツで研鑽を積むチェイス。逞しく成長した姿を大舞台で見せたい。写真:松尾祐希

 5月8日に行なわれたメンバー発表記者会見。U-20ワールドカップに挑む若き日本代表のリストに、CBチェイス・アンリ(シュツットガルト)の名前があった。

 今年3月のU-20アジアカップ(U-20W杯の最終予選)では、クラブ事情やコンディションの問題で選出されていない。代表活動もしばらく遠ざかっており、U-20カテゴリーは昨年2月下旬の活動以来で、日の丸を最後に背負ったのは昨年6月のU-21日本代表としてプレーしたU-23アジア杯まで遡る。

 U-20W杯への出場を切望していた男は、なぜメンバー入りを勝ち取れたのだろうか。

 尚志高時代から注目を集めてきた逸材だが、この1年は苦悩の連続だった。

 高校卒業後はJクラブではなく、ヨーロッパでプレーする道を選択。昨年4月に渡独し、同年6月にはU-21日本代表の一員として飛び級でU-23アジア杯に参戦するなど、183センチのサイズと規格外のフィジカル能力を活かしたプレーで、才能の片鱗を随所に見せつけてきた。

 しかし――。その6月以降、"チェイス・アンリ"は表舞台から姿を消した。一体何があったのか。4月上旬に現地で話を聞いた際、チェイスはドイツに渡ってからの日々をこう振り返る。
 
「(早くトップチームに上がりたい想いや周囲からの期待に対して)焦りやプレッシャーを感じていた。そのせいでオーバーワーク気味になり、10月頃には肺気胸にもなってしまった。1か月ぐらいサッカーができなかったので余計に……。ストレスがかなり溜まりましたね。コンディションも落ちて、その後もなかなか試合に絡めなかった。

 今シーズンはBチームに席を置いていますが、あまり先発出場の機会を得られなかった。試合に出られたとしても30分ぐらい。高校時代や代表では試合に出させてもらって、どんどん成長できたので、『このままじゃやばい』っていう気持ちがかなりあったんですよね」

 チェイスは今シーズンからシュツットガルトのセカンドチームのメンバーに登録され、日々トレーニングを重ねてきた。パス技術を改善するためにマンツーマンでトレーニングを行なうなど、新たな環境でも野心や向上心は変わっていない。しかし、心と身体がマッチせず、壁にぶつかったのだ。

 原口元気、遠藤航、伊藤洋輝といったトップチームでプレーする先輩たちや、父親のサポートで前向きな姿勢を崩さなかった。その一方で、試合に出られず、人知れずもがき苦しんでいたのは事実。ベンチ外も多く、久しくフル出場もできていなかった。そうした状況下でコンディションを維持するのは難しく、メンタル面も大きく崩れてしまった。

 その結果、チェイスは自信を失い、思い切ったプレーができなくなってしまう。ミスを気にし過ぎるがゆえに、本来の良さが出せなくなった。

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