【クラブW杯】初の世界大会で待望のゴール。浅野拓磨を突き動かす戦友への想いと成長への渇望

2015年12月14日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「岳人の気持ちも背負って戦う」。その想いがダメ押しの3点目を生んだ。

78分、右サイドのミキッチからのクロスを頭で流し込んでダメ押し。Jリーグチャンピオンシップ決勝に続き、本人曰く「あまり得意ではない」ヘディングで決めるあたり、成長を感じさせる。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 浅野拓磨は背負うものが大きくなればなるほど結果を残す男だと、12月13日のマゼンベ戦(クラブワールドカップ準々決勝)で改めて感じさせられた。

広島 3-0 マゼンベ|マッチレポート

「アイツの気持ちも背負いながら戦いたい」
 
 "アイツ"とは、開幕戦で右膝に全治8週間の重傷を負った、野津田岳人のことである。悔しさに押し潰されそうな同期を見て、最初はどう声をかけていいか、分からなかったという。そして、自分の中で導き出した答が、戦友の想いも背負って戦うことだった。
 
 マゼンベ戦での出番は、2-0とリードした75分。今季のリーグ戦同様、エースの佐藤寿人との交代でピッチに立った。会場には、三重から両親と家族が駆け付けており、普段どおりウォームアップを進めながらも、「早く試合に出たい」と思っていたという。そして、森保監督から「試合を締めてこい」というメッセージのこもった起用に応えるのだ。
 
 78分、右サイドを突破したミキッチの動きに合わせてスルスルと敵陣に侵入すると、クロスを頭でゴールに流し込み、試合を決定付ける3点目をゲット。今大会初ゴールは、相手を戦意喪失させるには十分すぎる一撃となった。
 
 ただし、浅野は「短い時間でゴールを取れたことは良かった」と追加点を振り返りながらも、その後ボールを収められなかったミスを反省材料に挙げる。マゼンベは終盤に陣形が崩れ、広大なスペースが生まれていた。それはスピードを武器とする浅野にとって、絶好のシチュエーション。しかし、そこで4点目を奪えなかったことの悔しさが噴き出した。それは、自身初となる世界大会の経験を糧にさらなる高みを目指したい、そして先述した野津田のためにも、結果を残してチームを勝利に導きたい一心からだ。
 
「こういった大きな舞台は、限られた選手しか経験できないし、本当に幸せなこと。(野津田)岳人は1年目から一緒にやってきた仲間だからこそ、アイツのぶんも頑張らないといけない。負傷で出られないのは僕も残念だし、なにより本人が悔しい想いをしている。試合に出たくても出られない選手のためにも、自分の100パーセントの力を出して、チームを勝利に導きたい」
 
 Jリーグのチャンピオンシップから過酷なスケジュールが続くが、「リーグ戦でもそれを乗り越えてきた」と浅野は意に介さない。むしろ、疲れどころか、「ワクワクする気持ちしかない」と嬉しそうに話す。次なる対戦相手は南米王者のリーベル。中2日で迎える厳しい一戦となるのは間違いないが、今季リーグのベストヤングプレーヤー賞に輝いた若武者が、再び長居のピッチで躍動する姿に期待したい。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)

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