「見つめ直せ」ゴタゴタ続きでCLも敗退のバイエルンにサポーターも苦言。カーンCEOは「批判を受け入れて…」【現地発】

2023年04月29日 中野吉之伴

「戦え!お前たちはまだやれる!」

CL敗退が決定し、うなだれるミュラーらバイエルンの面々。(C)Getty Images

 アリアンツ・アレーナへの地下鉄はにぎやかだった。ファーストレグを3-0で勝っているマンチェスター・シティのサポーターは上機嫌だ。地下鉄に乗り込むやすぐに大騒ぎ。自分たちで騒いで、自分たちから絡んで、自分たちで取り繕って、自分たちで謝って、とすべて自作自演で盛り上がっている。マンチェスターシティの充実さとバイエルンの不安定さを考えると、よほどのことがない限り準決勝進出は堅いと考える気持ちはわかる。

 いい調子ではないことをバイエルン選手も、監督も、ファンもわかっている。それでも何かを起こすことができるかもしれないという信念を失うわけにはいかない。試合を前にゴール裏には巨大なコレオとスタジアム中からの大きな声援。コレオはクラブカラーの赤と白、そして中心にはグレーでチャンピオンズリーグのカップが描かれ、そこに「King of the cup!」と書かれていた。

 一つ一つのプレーにファンが瞬時のレスポンスで歓声とブーイングを送り続ける。空気がひりひりしている。ここまで危機感迫るバイエルンは久しぶりだ。

 最近は、ピッチ内よりもピッチ外のことが毎日のようにメディアを騒がせている。ユリアン・ナーゲルスマン監督解任後にはその問題探しが長いこと行われ、そこから派生して「解任の報をナーゲルスマンに直接伝えることを首脳陣が怠った」と矛先が変わったり、レロイ・サネとサディホ・マネの小競り合いやヨシュア・キミッヒの挑発行為が執拗に報じられていく。

【画像】「ボクサー転向か」「いいパンチだったんだな」マネに顔を殴られたザネの傷口
 そうした話題で紙面を飾るのはもうたくさんだとファンは思っていたことだろう。バイエルンの遺伝子はどこへ行ってしまったのかと嘆いたことだろう。チームが心の底から勝利を渇望し、余計なことを一切考えずに、心も体も頭も解放して、ピッチで躍動する姿を願った。

 シティは強い。優勝候補筆頭とも言える戦力だ。だからと言ってこのまま無抵抗では負けられない。せめて、このセカンドレグだけでも勝ってほしい。バイエルンとしての誇りをピッチで見せてほしい――。そんな思いが、スタジアムを包み込むファンの熱気から感じた。

 だからだろうか、カウンターからアーリング・ハーランドに喫してはならない失点を奪われてしまった直後、ゴール裏のファンから大きな叫びが聞こえてきた。

「立ち上がれ!立ち上がれ!立ち上がれ!」

 その声は、思いは、選手に届いたはずだ。バイエルンは懸命にゴールを目指してまた駆けだした。

 残り時間が少なくなればなるほど、逆転の希望はどんどん薄れていく。83分、マネのクロスをマヌエル・アカンジがハンドの反則をしたことでPKを奪取。ただ正直、この時間帯にPKで1点返したところで…と思ってもおかしくはない。取らなければならないゴールはあと3点もある。それでもファンはキミッヒが決めたゴールを全力で喜んだ。記者席前の席で初老の男性がこれ以上できないほど大きなガッツポーズをしていた。そして叫んだ。

「戦え!お前たちはまだやれる!」

 試合はそのまま終わった。バイエルンは3年連続で準々決勝で涙を呑むことになった。それでもゴール裏のファンからは大きな拍手とバイエルンコールが起こっていた。選手も拍手で応えた。

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