【高円宮杯チャンピオンシップ展望】EAST王者・鹿島ユースが培ってきた驚異の集中力を大舞台で見せるか?

2015年12月12日 平野貴也

最終節で出場停止だったエースの垣田が“日本一”獲りへ気合十分。

EAST初優勝を果たした鹿島ユース。勝負どころで発揮する集中力の高さで栄冠を掴んだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 高円宮杯U-18サッカーリーグのチャンピオンシップが12月12日に埼玉スタジアム2002で開催される。東西チャンピオンが激突し、今年の高校・ユース年代の日本一を決める大一番だが、ここでは今季のプレミアリーグEASTの戦いを振り返るとともに、東の王者・鹿島ユースの強さを紐解く。
 
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 EAST王者の鹿島ユースは、抜群の勝負強さを誇る。昨冬のJユースカップを2年生中心のチームで制しており、今季は土台が固まった状態からのスタートだった。
 
 開幕から9戦無敗(6勝3分)で首位を走り、シーズンの中頃には引き分けや負けを挟んだが、連敗することなく上位をキープ。そして、終盤は見事な5連勝で上位の直接対決を制して初の栄冠に輝いた。
 
 なんと言っても、重要な試合での勝負強さが物を言った。特にラストの2試合は、上位対決。第17節は勝点2差で首位を走る青森山田との直接対決で、これを制して首位に返り咲いた戦いは、驚異的だった。
 
 立ち上がりにPKで先制すると、1点あれば十分という抜群のゲームコントロールを披露。U-18日本代表DF町田浩樹を中心としたリーグ最少失点の守備陣が、相手の猛反撃を食い止め、前線では大型FW垣田裕暉や、小柄ながら突破力のある吉岡樹利也、西本卓申、スーパーサブの色摩雄貴らが相手ののど元に突き付ける刃のごとく鋭いカウンターを見せ、守備一辺倒になることなく相手をけん制し続けた。攻守ともにハードワークと集中力の高さを欠くことなく、隙のない強さを示した。
 
 最終節は、勝たなければ青森山田に再逆転される可能性がある状況下、エースの垣田を累積警告で欠いたが、粘る市立船橋を突き離してきっちりと勝利を収め、プレミアリーグEASTの初優勝を決めた。
 
 今季のプレミアEASTは、上位、中位、下位が序盤からはっきりと分かれる展開。降格となった札幌U-18、JFAアカデミー福島U-18は序盤の6試合でそれぞれ全敗、1勝とスタートダッシュに失敗した印象が強かった。
 
 昨季王者の柏U-18と清水ユース、流経大柏も連敗が多く、波に乗り切れなかった。鹿島は、青森山田、市立船橋、大宮ユース、そして中位から上位をうかがったFC東京U-18との首位争奪戦に最後の最後で競り勝った。敗戦や悪いリズムを引きずらなかった精神力も見落とせないポイントだ。
 
 昨冬は、徹底的な堅守からロングボールを使った速攻を仕掛けるスタイルで日本一。攻撃は、とにかく速くゴールへ迫るという迫力はあったが、精度を欠く場面もあり、熊谷浩二監督は「これだけで良いとは思っていない。来季はもう少し攻撃の部分もやっていく」と話していた。
 
 今季も基本的には手堅い守備から、ターゲットとなる大型FW垣田裕暉にボールを集める基本線は変わらない。しかし、スペースへ蹴って走るばかりではなく、垣田のポストプレーから2列目が勝負を仕掛けたり、昨冬はトップ下に入っていた平戸太貴がボランチとして最終ラインからボールをピックアップして展開したりと、少しずつ状況判断によって変化するバリエーションが増えている印象だ。
 
 主将の千葉健太は「垣田が相手と入れ替わって前に行くだけでなく、収めたり、2列目を使ったりするようになって、攻撃の幅は広がっていると思う。元々、守備から入るチームだけど、昨年に比べたら攻撃の形は増えていると思う」と手応えを口にする。
 
"走る、戦う"という勝負の根本を徹底し、技術や戦術の幅を少し広げることに成功しつつある鹿島が目指すのは、チャンピオンシップでの優勝だ。奇しくも対戦カードは、昨冬のJユースカップ決勝と同じ、G大阪ユースとの対決になった。
 
 最終節を欠場した垣田は「連れて行ってもらう立場になってしまったので、チャンピオンシップでは自分が出場して点を取って、恩返しをして、この最高のチームで優勝して終われたらなと思う」と話した。勝った上で進化した姿を見せられるか注目だ。
 
取材・文:平野貴也(フリーライター)
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