【都並敏史が語るJ30周年 #3】「課題も少なくない」。現状を踏まえ、求めたいことは? 選手には貪欲に突き詰める姿勢、クラブには実務ができてサッカーも知っている人材

2023年04月21日 元川悦子

“最後の質”を上げるためには?

J誕生から30年が経ち、日本サッカーは発展。一方で、都並は物足りなさを感じている部分もあるという。写真:鈴木颯太朗

 Jリーグ30周年を記念した特別連載インタビュー。現在はブリオベッカ浦安で監督を務める元日本代表DFの都並敏史が登場。シリーズ第3回をお届けする。

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 今や欧州で50~100人の日本人選手がプレーし、日本代表がワールドカップ(W杯)に7大会連続出場を果たすなど、30年前には考えられない状況になっている。1993年5月のJリーグ開幕戦のピッチに立っていた都並敏史も、それを実感している。

 その反面で「課題も少なくない」という。その1つが選手の意識。「サッカーを突き詰めようという貪欲さ」には、物足りなさを覚えることも多々あるようだ。

「僕らが現役だった頃は、今のように欧州サッカーを視聴できる環境になかったので、限られた情報を懸命に取りに行き、自分のレベルアップと本気で向き合っていました。でも、今は情報過多の時代で、サッカーを見ようと思わなくても映像が見れたりする。しかも若い選手でも海外に行けるようになっているので、選手のガツガツ感や熱が少し欠けてしまっているのかなと。自分の技術を突き詰めようという選手が少ないとも感じます。

 ただ、突き抜けようと思うなら、やっぱり徹底的にやり込まないとダメ。佐藤寿人なんかはずっとインザーギの映像を見て、裏抜けのタイミングや駆け引きを追求して、点の取れるスタイルを築いた。本当にサッカーが好きでいつも見ていたといいます。そのくらいの貪欲さがないと、最後の質は上がらないと痛感しますね」
 
 ボール奪取の部分に関しても、日本はカタールW杯優勝国のアルゼンチンやフランスなど強豪国に比べると劣っていると言われる。そこは都並も感じている部分だ。

「日本人の守備はインターセプトが第一で、それができなければ間合いを詰めて相手を振り向かせないというのが基本です。アルゼンチンの場合は、相手から奪い取ることを考える。相手にわざと持たせて刈り取るような駆け引きや身体の当て方、踏み込み方が本当に上手い。それはブラジルというライバルがすぐ近くにいるから伝統的に養われたものでしょうが、日本の選手もそういう部分にこだわらないと上には行けない。選手には高い領域を目ざす野心を持ってほしいと思います」

 そのうえで、サッカー選手がエンターテイナーだということを忘れてはいけない。ピッチ上で100%の力を出すのは当然のことだが、ピッチ外でも見る者を楽しませられる選手が真のプロだと都並は強調する。

「時には感情を表に出したり、意見を堂々と口にすることも必要。そういう意識は、Jリーガーよりも吉田麻也(シャルケ)ら海外組のほうが高いように感じます。だからこそ、Jリーガーにももっと個性を出してほしい。かつてのゴンちゃん(中山雅史)がスタンドの観客と一緒になって試合を盛り上げたような、一体感を作れる選手にもっと出てきてもらいたいですね」と都並は熱望する。

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