様々な想いが詰まった「今なら」。大学屈指のボランチ藤井海和は、多くのJクラブが即戦力として欲しがる存在に

2023年04月15日 安藤隆人

高校時代に厳しい現実を痛感

大学サッカーで着実に力をつけた藤井。写真:安藤隆人

 3年生ながら背番号10を背負う流通経済大の藤井海和は今、大学屈指のボランチとして大きな注目を集めている。

 冷静沈着に周りの状況を把握しながらコーチングで守備のバランスをコントロールしたり、自分が狙っている場所に誘い込んでボールを奪うなど、頭脳的なプレーが光る。一方で、端正な顔立ちからは想像できないほど激しく仲間を鼓舞したり、球際の強さを見せるなど、闘志あふれるプレーも魅力として持つ。

「大学に来て、自分を整理できたというか、いろいろな経験を積み重ねさせてもらった。今ならプロに行って活躍できる自信はあります」

 藤井が口にしたこの言葉に、これまでの彼の歩んできた人生が含蓄されていた。

 流通経済大柏高時代、1年生ながらレギュラーを張り続け、U-17日本代表、U-18日本代表、日本高校選抜に選ばれるなど、まさにエリート中のエリートだった。

 しかし、高校3年生の時にJ1クラブとJ2クラブの練習に参加するが、声は掛からず。それでも自身を高く評価してくれていた中野雄二監督の思いを受けて、そのまま流通経済大に進学して、大学経由でのプロを目ざすことになった経緯があった。

 藤井が「今なら」と表現したのは、高校時代に悔しさと自身の現在地を痛感させられた厳しい現実を経験したからだった。
 
「高校時代はそれなりに自信がありましたが、プロの練習に参加した時、プレー強度や自分の引き出しがまだ足りないと感じたんです。仮にオファーをもらえて行ったとしても、試合に出られないで、そのまま埋もれて行ってしまう選手になってしまうと思ったんです」

 自分の特長は何なのか。当時、CBとボランチをやっていたが、ボール回収力や奪取力は表現できたが、そこから先のプレーの選択肢が足りない。「自分はこれでこの世界を生きていくんだ」という強烈な武器がまだないことに気付いた。

 必要とされなかった現実に悔しい気持ちは当然あったが、ここで焦ってプロを模索するのではなく、しっかりと大学で自分を見つめ直しながら、経験を積んで力を蓄えて行ったほうがいいと判断し、大学進学を決めたのだった。

 その結果、流通経済大でかけがえのない財産を積み上げている。藤井のポテンシャルを高く評価していた中野監督は1年時から彼を攻守の要として起用し、高校時代にキャプテンとしてチームを牽引したように、持ち前のリーダーシップや責任感を発揮できる土壌を作った。

「1年生の時に安居海渡選手や菊地泰智選手にアドバイスをたくさんもらったのですが、最初は言われてもあまりピンとこなかった。でも、試合経験を積んでいくごとにだんだんと『こういうことだったのか』と、その意味が分かってきたんです。この大学だからこそ、大きな学びを得ながら成長できていると思います」

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