アディショナルタイムのドラマ!! 追いつかれたドルトムントを香川の一撃が救う――ヴォルフスブルク 1-2 ドルトムント

2015年12月06日 遠藤孝輔

バイエルンに食らいつくのに不可欠な勝点3をもたらした香川。

 勝負の神様は、時に残酷だ。

 攻めに攻め立て、アディショナルタイム(AT)に同点ゴールを奪ったチームを、その直後に奈落の底へと突き落とすのだから。ブンデスリーガ第15節のヴォルフスブルク対ドルトムント戦では、あまりにも劇的なフィナーレが待っていた。
 
 3時間前にキックオフされた試合で、首位のバイエルンが敗戦。その王者との差を埋める絶好の機会を得た2位ドルトムントは、スタートと同時に猛攻を仕掛ける。
 
 3分にギュンドアンのFKが、その2分後にムヒタリアンのクロスに合わせたCBベンダーのシュートがクロスバーを直撃。ナウドのオウンゴールを誘発しかけたクロスを撃ち込まれたのは9分のことで、アウェーチームは瞬く間に3度の得点機を作り出した。
 
 シュールレとクルゼの2トップが噛み合わず、むしろ中盤での数的不利を招く結果となっていたヴォルフスブルクは、25分過ぎにシステムを4-2-3-1に変更。すると31分、本職の左ウイングに入ったシュールレによるカットインからのシュートで、ようやくドルトムント守備陣を脅かすに至る。
 
 しかし、そのわずか1分後にミスから失点を喫する。ムヒタリアンのプレスに慌てたギラボギが自陣でボールロストし、そのこぼれ球を拾ったロイスに決められた。
 
 ホームで29試合無敗を誇るヴォルフスブルクが真価を発揮したのは、ここからだ。システム変更がハマり、ボールを触る機会が増えたトップ下のドラクスラーを中心に、ドルトムントの守備網を切り裂きにかかる。
 
 そして61分、相手GKの気の抜けたようなパスをカットしたドストが決定機を迎える。しかし、至近距離からのシュートは直前に失態を犯したビュルキの懸命なセーブに阻まれた。
 
 前半途中から劣勢だったドルトムントは55分に香川を投入する。だが、相手に明け渡した主導権を引き寄せられない。チャンスらしいチャンスはムヒタリアンのクロスがオーバメヤンに渡った78分のシーンくらいで、攻めるヴォルフスブルク、守るドルトムントという構図が、フィールド上にはっきりと描かれていた。
 
 それでもスコアは動かないまま、時計の針は90分に差し掛かる。このまま決着かと思われた瞬間だった。ドリブルでエリア内へ侵入したシュールレがPKを獲得。これをR・ロドリゲスが決めて、ヴォルフスブルクがまさに土壇場で追いついた。
 
 しかし、その直後に信じられないような結末が……。ATの2分、ドルトムントが敵陣の深い位置で右→左と揺さぶる。そして、ゴール前に飛び込んだ香川がムヒタリアンの折り返しのパスに左足のダイレクトで合わせ、値千金の一撃をネットに突き刺したのだ。
 
 勝利の女神が最後に微笑んだのは、好調のカストロにスタメンの座を譲り、ベンチで爪を研いでいた男。何が起こるか分からないサッカーの真髄を、ドルトムント、そして香川が改めて世界に知らしめた。

文:遠藤孝輔
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