「1年目は簡単ではない」と俊輔も見通し。横浜FCの新戦術、課題はあるも着実に浸透。小川航基は「継続したい」と手応え

2023年04月03日 垣内一之

「勝てなかったけど、次につながる試合になった」

開幕6戦を終え、いまだ勝利のない横浜FC。ただ戦い方は整理されつつあり、攻守にポジティブな面が見られた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第6節]横浜FC 1-1 福岡/4月1日/ニッパツ三ツ沢球技場

「勝てた……」

 この日、前半アディショナルタイムにPKで今季5ゴール目を決めた横浜FCのエースFW小川航基は、試合終了のホイッスルが鳴ると、そう言わんばかりの悔しそうな表情を浮かべていた。 
【PHOTO】横浜FCの出場16選手&監督の採点・寸評。PK弾の小川航が攻撃を牽引。途中出場の新井がサイドで存在感
 約2週間の代表ウイークを挟んで再開したJリーグで、横浜FCはアビスパ福岡と対戦し、1-1で引き分けた。

 横浜FCの注目は、中断期間にこれまでの戦いぶりを振り返り、どれだけ戦い方が整理されて、修正されたかであった。

 というのも、チームは今季、昨季の3バックから4バックに変更し、サイドバックが中央に絞ってビルドアップに参加するなどの新たな戦術に挑戦。だが、まだ取り入れて時間が浅いからなのか、攻守ともにまったく浸透していない戦いぶりを露呈していたからだ。 

 結論から言えば、この試合を見る限り、まだまだ課題は多いものの、戦い方がかなり整理された感じを受けた。守備に関しては、前線から激しいプレスを受けた時の脆さは気になったものの、相手が自陣でボールを繋いだ時に、闇雲に前からプレスに行くのではなく、状況に応じてリトリートし、相手のロングボールに対してセカンドボールをしっかり拾うなど意識が徹底されていた。 

 攻撃でも今まで見られなかったプレー、特に3人目の動きが見られた。例えば前半アディショナルタイムに相手の右サイドを崩したシーン。左センターバックの吉野恭平が、左サイドバックの林幸多郎とのパス交換で相手を食いつかせ、その間に三田啓貴がディフェンスラインと中盤の空いたスペースに侵入する。

 そして吉野から縦パスを受けた三田が、ダイレクトでフリックし、上手く中に走り込んで絡んだ左MF坂本亘基が前向きでボールを受け、最後はディフェンスラインの裏に走り込んだ小川航にスルーパスを出した。 

 惜しくも最後のパスが少しサイドに流れてフィニッシュまでにはいけなかったが、可能性を十分に感じさせた綺麗な崩しだった。
【動画】今季5点目! 小川航基がPKを確実に沈める
 小川航も試合後、このシーンに限らず少し整理された攻撃の形に「前線の選手が良い動き出しをする。(パスの)出し手に分かりやすい動きをする。それを繰り返すことで、ゴールも近づいてくると思う。継続したいと思います」と手応えを口にしている。 

 名将グアルディオラがバイエルン時代に導入し、最近では森保ジャパンも取り入れるなど世界の主流となっている"偽サイドバック"戦術。今回はたまたま堅守速攻の福岡と戦術的にかみ合った可能性もあるが、何より継続することが重要だ。 

 思い返せば、昨年限りで現役を引退した中村俊輔コーチも開幕前、現セルティックのポステコグルー監督が同様の戦術を取り入れた横浜の就任1年目に、残留争いに巻き込まれたケースを引き合いに出し「1年目は決して簡単ではない」と予想していた。 

 今シーズンはまだ6試合を終えたばかり。来季からの20チーム制移行により、降格もわずか1チームと少ない。J1残留のチャンスは十分にある。

 小川航も「やっぱりこのチームには勝点3が必要。前線からの守備などチームにプラスになることをやっていくだけ。勝てなかったけど、次につながる試合になったと思う」と前向きに話した。 

取材・文●垣内一之(スポーツニッポン新聞社)

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