好守連発にスタジアムがどよめく。不断の努力で自らを高めたGK鈴木彩艶、ドイツ戦で真価を証明【U-22代表】

2023年03月26日 松尾祐希

アグレッシブなスタイルを取り入れ、キック精度も見直し

ドイツ戦で先発した鈴木彩。悔しい2失点も、目を見張るビッグセーブでピンチを何度も救った。(C)Getty Images

[国際親善試合]U-22日本 2-2 U-22ドイツ/3月24日/PSDバンク・アレーナ

「試合に出るのが一番。浦和レッズで試合に出るためにやってきたなかで、まだリーグ戦では試合に出られていないけど、出た時にいかに高いパフォーマンスを出せるかが大事」

 試合前日の言葉通り、GK鈴木彩艶(浦和)は目を見張るパフォーマンスでチームを何度も救った。現地時間3月24日に行なわれたU-22日本代表対U-22ドイツ代表の親善マッチ(2-2)で、日本の守護神はCKやクロスの場面では屈強なドイツ人選手に競り負けず、勇敢な飛び出しでボールを掴んだ。

 こぼすような場面はほとんどなく、守備範囲の広さも含めて、完璧に対応。近距離からのシュートに対してはコースを消しながら前に出て、冷静に処理した。

 とりわけ、素晴らしかったのが9分の場面。ゴール前で強烈なシュートを放たれると、即座に反応してボールを弾く。しかし、相手もこぼれ球を見逃さずに詰めてくる。誰もが失点を覚悟した次の瞬間、体勢を立て直してストップ。驚愕のビッグセーブに超満員のスタジアムにどよめきが起こった。

 このプレーについて、鈴木は「練習で自チームでもそういうトレーニングはしていますし、成果が出た部分」と冷静に振り返った。

 試合に出られない日々が続いても、努力は怠らない。試合勘の不安こそあったが、蓋を開けてみれば圧巻のプレーで守備陣を鼓舞。2失点したものの、1つはPK、もう1つは完璧にサイドを崩された形で責められない。

 特に後者はノーチャンスだったが、ポジションをしっかり取って、素早く反応してボールには触れていた。そうした失点の内容も含め、この日の出来は本当に素晴らしかった。
 
 思い返せば、昨季はクラブで西川周作の牙城を崩せず、出場機会はカップ戦が中心で思うような結果を残せなかった。パリ五輪を目ざす大岩ジャパンでは、6月のU-23アジアカップで正GKとして活躍した一方で、9月の欧州遠征では出番を得られない悔しさを経験した。

「昨年はアジアカップに出場したけど、その後の欧州遠征で出場機会がなかった。プレーすることは当然なんですけど、常に焦りというか、プレッシャーはある。試合に出ることが一番。そこの焦りはある」と話す通り、クラブで試合に出られていない現状はポジション争いに直結する。

 各年代の世代別代表で常に競い合ってきた佐々木雅士(柏)がクラブで出場機会を増やし、代表のポジション争いはより激しさを増してきた。だからこそ、今季は出場機会を掴むと誓っていたのだ。

 しかし、現実は甘くない。西川の控えに甘んじ、ベンチから戦況を見守る日々が続く。とはいえ、できることはある。ジョアン・ミレGKコーチとともに新たな取り組みをスタートさせ、1対1の対応方法を見直した。

 アグレッシブに守るスタイルを取り入れ、「これがもっともっとスムーズにできれば、守備の幅が広がる」と手応えを得ている。西川からポジションを奪うべく、中距離のキック精度も見直しを図っており、さらなる成長に余念がない。

 そうした努力がドイツ戦では随所に見られ、ハイパフォーマンスに繋がった。今回の遠征を飛躍のきっかけにできるか。日本の未来を担うべき守護神は成長スピードをさらに上げ、目ざすべき場所に辿り着く。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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