【選手権代表校レポート】前橋育英|夏の屈辱から這い上がった前回準優勝校。悲願達成へタイガー軍団が着実に進化!

2015年12月02日 安藤隆人

インターハイ予選で敗退し、チームの土台作りを徹底。

前橋育英(群馬)
所在地:群馬県前橋市朝日が丘町13
創立:1962年 創部:1964年
選手権最高成績:準優勝(2014年度)
主なOB:細貝萌(ブルサスポル/トルコ)、青木剛(鹿島)、皆川佑介(広島)、渡邊凌磨(インゴルシュタット/ドイツ)
写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 屈辱の夏から這い上がって来た。
 
 鈴木徳真(筑波大)と渡辺凌磨(インゴルシュタット/ドイツ)の2枚看板を抱え、タレント集団だった昨年のチームは、選手権準優勝という偉業を成し遂げた。今年はそのメンバーがごっそりと抜けて、ほぼ一からのスタートだった。
 
 苦戦が予想された今シーズン、ふたを開けてみれば、選手権経験者のFW野口竜彦、MF横澤航平のふたりを軸に技術の高い選手はいるものの、やはりそれがチームとして噛み合うまでには時間がかかった。
 
 春先のフェスティバルでは苦戦の連続。プリンスリーグ関東では奮闘を見せるも、インターハイ予選では決勝で桐生一に0-2で敗れた。
 
 ここからタイガー軍団の巻き返しが始まった。
「このチームは全然悪くはない。めちゃくちゃ強いわけではないが、間違いなく力はある。あとはそれをもっと引き出すだけ」
 
 これまで数々のJリーガーを輩出してきた山田耕介監督は、確かな手応えを感じていた。だからこそ、インターハイのない夏場をフルに活用して、このチームの土台を徹底して築き上げた。
 
「高さはないけど、ウチには突破力のあるサイドアタッカーがいるし、シュートの上手い選手もいる。クロスからの攻撃を武器にできると思った」と、徹底したサイドアタックと、基本的なパス、空中戦に的を絞って、反復練習を繰り返した。
 
 ベースの徹底とストロングポイントの構築という明確な方向性が打ち出されたことにより、元々高い技術を持っていた選手たちの意識が統一され、足りなかった組織力が生まれていった。
 
 そして、選手権予選でようやくそれまでの試行錯誤が実を結ぶのだ。準決勝で前橋商を1-0で下すと、決勝では夏に完敗を喫した桐生一と激突。尾ノ上幸生と大塚諒のダブルボランチにボールを集め、彼らのテンポの良い配球から2トップを経由し、左サイドの金子拓郎、右サイドの佐藤誠司が積極的な仕掛けでチャンスボールを送り込む。
 
 序盤で完全にリズムを掴むと、14分には尾ノ上が蹴った右CKを、ファーサイドで金子がヘッド。このボールをゴール前で横澤が身体でコースを変えて押し込み、先制点を奪う。さらに27分には右サイドを突破した佐藤の折り返しを、相手GKがパンチング。そのボールを受けた横澤が、ドリブルで持ち出し、そのままシュート。追加点を奪った。
 
 前半は桐生一のシュートをゼロに抑えるなど、攻守において相手を圧倒してみせた。だが、後半になると状況は一変し、高さとパワーを前面に出して来た桐生一に押し込まれ、64分、75分と失点をし、同点に追いつかれた。
 

次ページ逆転される条件は揃っていたが、持ち堪えたところに成長の跡が窺える。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事