A代表初選出の名古屋DF藤井陽也、若き俊英の秘めたるポテンシャルとは? 世界観が拡がり始めたタイミングで好機到来

2023年03月20日 今井雄一朗

たゆまぬ努力を重ねて“その時”のために準備

角田の参加辞退を受け、追加招集となった藤井。「対人の守備や攻撃参加の部分を代表でも発揮し貢献していきたい」と意気込み。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 日本サッカー協会は3月20日、国際親善試合2連戦を行なう日本代表メンバーに選出されていたDF角田涼太朗(横浜)が怪我のため活動参加を辞退すると報告。DF藤井陽也(名古屋)の追加招集を発表した。

 藤井はこれがA代表初選出。第2次森保ジャパンの船出で、日の丸のチャンスを与えられた男の秘めたる能力とは――。

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 実力とポテンシャルを考えれば、"追加"でなくても選出されておかしくない実力派である。22歳とまだ若いが、昨季は名古屋グランパスで公式戦43試合に出場し、押しも押されもしないチームの主力としての地位を獲得した。

 2022年の序盤は長谷川健太監督から「ポカが多いから丸山(祐市)と中谷(進之介)を両脇につけている」と言われるほどに未熟だったが、終盤には中谷をセンターに戻して3バックの両脇を任されるようにもなった。

 一本立ちした今季は開幕からスタメンを張り、ここまで5試合で1失点の名古屋の堅守を支える頼れる主力の一人である。
 
 名古屋にとってはクラブ史上初のスクール、そしてU-12のアカデミーから所属した"純血"の生え抜きのA代表選出だ。ただし、その道のりは順風満帆ではなく、U-12の入団テストには何度も落ち、怪我に苦しんだU-18時代は、トップ昇格が決まったのが異例の12月だった。

 プロ1年目から3年目までの出場機会は数えるほどで、しかも当時の風間八宏監督、マッシモ・フィッカデンティ監督はほとんど練習試合をしないタイプの指揮官であり、実戦経験を積む機会はほんのわずか。2021年のアジア・チャンピオンズリーグでは無失点を続けてきたグループステージ最終節で失点に絡む痛恨のミスを犯し、その後の評価につなげることもできなかった。

 転機は突然に訪れた。いや、彼にしてみればそれは必然だったのかもしれない。苦労に苦労を重ねたプロ入りからの3年間で、それでも藤井はたゆまぬ努力を重ねて"その時"のための準備をしてきていた。

 187センチの長身だが、昇格1年目の体重は75キロとやや軽く、「あの頃はガリガリでした」と苦笑いする。まず1日5食の"食事トレ"から始めた藤井は、先輩の影響を受けて1年目のオフからパーソナルトレーナーをつけ、しかも一人ではなく「そういう誘いがあったら全部行くようにしていた」と、とにかく旺盛に成長への自己投資を続けてきた。

 その成果のひとつがスピードアップで、今や藤井のスプリント力はチーム屈指のレベルにある。チームのフィジカルトレーニングで永井謙佑やマテウス・カストロらと同じグループに入れられる、と言えば理解は早いだろうか。

【PHOTO】ウルグアイ・コロンビアとの親善試合に挑む日本代表招集メンバーを一挙紹介!
 

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