【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のバルサを振り返る vol.6~1996-97シーズン ~

2015年11月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

“怪物”ロナウドの大活躍で2つのタイトルを獲得したが…。

1-0で勝利したPSGとのカップウィナーズ・カップ決勝でもPKを決めたロナウド(中央)。金メダル確実といわれながらも、初戦で日本に敗れたり、銅メダルに終わったりと、不完全燃焼で終わったアトランタ五輪後の加入だったが、バルサでは最初から最後まで活躍を続け、あっという間に去って行った。 (C) Getty Images

 1993-94シーズンのチャンピオンズ・リーグ決勝でミランに0-4で敗れて以降、ヨハン・クライフ監督が創り上げた「ドリームチーム」は弱体化。翌シーズンはリーガ4位、国王杯はベスト16止まり、チャンピオンズ・リーグも準々決勝敗退と、無冠に終わった。
 
 そして、過剰なほどの戦力補強を求めるクライフとジョゼップ・ルイス・ヌニェス会長との関係も悪化していた95-96シーズン、シーズンも残りわずかというところで、レジェンドはあっさりと解任された。
 
 それまでクライフは、自分のチームに必要ないと判断すれば即、選手にその旨を通告して切り捨ててしまう非情さを発揮してきたが、今後は自身が同じやり方でバルサを追われたのである。もっとも、それでクライフのバルサへの影響力が弱ることはなかったが……。
 
 残り数試合でカルロス・レシャックに指揮権を与えたバルサが、来る96-97シーズンのチームを託したのがボビー・ロブソン。テリー・ベナブルス以来のイングランド人だった。
 
 国内外のクラブ、代表チームで多くの実績を重ねてきたベテラン指揮官に対して、ヌニェス会長は80年代にも招聘を画策していたことがあるほど信頼を寄せていた。
 
 しかし、クライフによるスペクタクルなサッカーに心酔し続けてきたバルセロニスタにとって、「イングランド人監督=退屈なサッカー」。ロブソンがPSV、スポルティング、ポルトでも指揮を執って高評価を受けていたにもかかわらず、受け入れるのを躊躇していた。
 
 ロブソンにとっては、ややタイミング的に悪すぎる監督就任だったが、彼は周囲の不信感を払拭する可能性を持つ最強の武器を手に入れた。PSVから20億円超の移籍金で獲得した、当時弱冠19歳のブラジルFW、ロナウドである。
 
 すでに世界一のタレントと称されていた"怪物"は、指揮官の目論見通り、いきなり大暴れを見せた。群を抜くテクニック、あっという間にDFを置き去りにするドリブル、そして抜群の決定力……。彼が決めた10試合連続ゴールは、2012‐13シーズンにリオネル・メッシが破るまで、リーガの最高記録となった。

 そして記憶に残るスーパーゴール――。12月12日のリーガ第7節コンポステーラ戦では、60メートルをトップスピードのドリブルで激走し、DFを翻弄しての歴史的な一発を決めた。
 
 3シーズン前にロマーリオが成し遂げたのと同様の、加入1年目でのリーガ得点王にロナウドを導いた34得点は、バルサにも多くの勝点をもたらしたことは言うまでもない。またその得点力はカップ戦でも発揮され、このシーズン、バルサは国王杯とカップウィナーズ・カップを手にすることとなった。
 
 しかし、リーガでは栄冠に手は届かず。イタリアの智将ファビオ・カペッロ率いるレアル・マドリーに14節以降は首位を明け渡し、そのまま2位でシーズンを終えた。勝利数28はマドリーを上回り(マドリーは27)、42試合で102得点(マドリーは85)を挙げたが、勝点差2を逆転することはできなかった。
 
 それ以上にバルセロニスタに不満を与えたのは、やはりバルサの戦いぶりだ。ロナウドは確かに素晴らしかったが、そこにクライフ時代のダイナミックな組織サッカーは見られず、ロブソン自身が「ロナウドが戦術だ」と語るようでは、支持を得られるはずもなかった。
 
 加入1年目で圧倒的な存在感を見せつけたロナウドは、以降もチームのシンボルとしてプレーするはずであり、バルサは100億円を超える違約金を設定したものの、さらなる"怪物"の価値の上昇と、金儲けを企んだ代理人の暗躍により、ロナウドはシーズン後、ミラノ(インテル)へと旅立って行った。
 
 そしてロナウドに運命を託したロブソン。バルサでの監督キャリアは1年で終わりを告げ、翌シーズンはGMに就任することとなる。
◎1996-97シーズン成績
リーガ:2位(28勝6分け8敗・102得点48失点)
国王杯:優勝(対ベティス)
カップウィナーズ・カップ:優勝(対パリ・サンジェルマン)
 
チーム内得点ランキング(リーガ):ロナウド(34点)、L・エンリケ(17点)、ピッスィ(9点)、ストイチコフ(7点)、ジオバンニ(7点)、フィーゴ(4点)、ポぺスク(4点)、オスカール(4点)、アベラルド(3点)、デ・ラ・ペーニャ(2点)、ロジェール(2点)、バケーロ(1点)、アムニケ(1点)、セルジ(1点)、ブラン(1点)、ナダル(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN

GK V・バイア(←ポルト)
DF ブラン(←オセール)
DF F・コウト(←パルマ)
MF ジオバンニ(←サントス)
FW ロナウド(←PSV)
FW ストイチコフ(←パルマ)
FW L・エンリケ(←レアル・マドリー)
FW ピッスィ(←テネリフェ)

MF アムニケ(←ベンフィカ)
◇OUT

MF ハジ(→ガラタサライ)
MF J・クライフ(→マンチェスター・ユナイテッド)
MF ベラマサン(→オビエド)
FW コドロ(→テネリフェ)

MF バケーロ(→ベラクルス)
MF プロシネツキ(→セビージャ)
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