最前線に入れない悔しさを糧に、2シャドーの一角で数字とプレーの幅にこだわる…ベルギー移籍1年目、上田綺世の今【現地発】

2023年02月20日 元川悦子

「センターフォワードよりも自分に合ってる部分もある」

ベルギー1年目ながら、すでに10ゴールを奪っている上田。写真:元川悦子

 現地時間2月19日に行なわれたサークル・ブルージュ対クラブ・ブルージュのダービーマッチ。2017年には日本代表がベルギー代表と対戦したヤン・ブレイデル・スタディオンは、試合開始前から発煙筒が焚かれ、凄まじい熱気に包まれた。

 ここまで25試合を終えて、8位とプレーオフ(PO)圏内につけているサークル・ブルージュとしては、宿命のライバルに勝利し、より上の位置に浮上する足掛かりを築きたかった。

 ベルギー移籍1年目ながら、早くも10ゴールをマークする上田綺世は3-4-2-1の左シャドーで先発。立ち上がりから凄まじいハイプレスをかけに行き、ボールを奪おうとする。そして開始5分には、右CKの場面でヘディングシュートを狙う。これは惜しくも得点には至らなかったが、ゴールへの鬼気迫る思いが如実に出ていた。

 直後には左サイドからのドリブル突破で、対面に位置する相手の右サイドバックのデニス・オバイを抜き去る果敢な仕掛けを披露。最前線を主戦場にしていた鹿島アントラーズや日本代表ではあまり見せたことのない局面打開にも意欲的に挑み、プレーの幅を広げていることが窺えた。

「最前線じゃない分、新しい自分の武器とか、求められるタスクの種類が違ったりしている。守備面もそうだし、攻撃も含めて、センターフォワードよりも自分に合ってるような部分もあるのかなとも感じてはいます。

 それでも僕は『センターフォワードをやりたい』というジレンマを抱えながら、今季プレーしてきました。そういうなかで、『自分じゃなきゃできないオリジナリティ』をどう新しいポジションで作っていくかをずっと考えて取り組んできた。動き出しや攻撃性といった部分にはこだわりを持ってやってきました」と上田は語っていたが、もがきながらも2シャドーの一角に陣取る自分に磨きをかけている様子だ。
 
 その後、サークル・ブルージュは相手に一瞬で背後を突かれて、VAR判定の末に失点。前半を0-1の劣勢で終えると、後半開始直後にケビン・デンキーが同点弾をゲット。これでリズムを取り戻したが、再び1点をリードされてしまった。

「2失点目の後、少しメンタル的にも疲労感がどっと表われた時間帯があった」と上田も話したが、彼は闘争心を持ち続け、攻守両面で献身的なプレーでチームを引っ張る。その姿勢が奏功し、78分にリスタートからティボ・サマーズが同点ゴールを奪う。

 上田自身はその後、決勝点を挙げるチャンスが何度かあったが、この日は欲しいポイントでラストパスをもらえない場面が多く、残念ながら無得点。チームも2-2のドローに持ち込むのが精一杯だった。

「今日は確かになかなかボールが来なかったのはあります。9番(デンキー)にも『ニアに釣ってくれれば、左にいる自分がフリーになるから』と話したりするし、(マイロン・ムスリカ)監督も言ってる。自分はそれを言いつつやりつつ、日々トライしています。そういう作業を7、8か月続けてきて、少しは僕の考えも浸透してきたのかなと感じます。

 このチームはそこまでテクニカルじゃないし、見た通りの蹴って走ってっていうスタイル。そこで活躍できることに価値があると思う。僕は『どういう環境に行っても点を取るのが理想』とずっと言ってますけど、チーム事情とか環境とかを言い訳にせず、結果を出すというのを追い求めています」と本人はどこまでも前向きだった。
 

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