5部から這い上がったシャルケ上月壮一郎は「需要がなくなる」と危機感。とことん結果にこだわり、シンデレラストーリーから“卒業”できるか【現地発】

2023年02月14日 元川悦子

魅力は、大胆なドリブル突破と縦への推進力

デビュー&初得点の1月はクラブの月間MVPに選出された上月。ドイツで華々しい一歩を刻んだ。写真:元川悦子

「上月(壮一郎=シャルケ)は日本人の可能性を示してくれている。J2のレベルでやっていた選手がドイツに渡って、下部リーグから始めて、評価されて、ブンデスリーガでプレーするというのは本当に夢。そういうサクセスストーリーを若い選手に見せてくれている。本当にガムシャラで必死な姿を見て、もっともっと成長するなと思いました」

 2週間の欧州視察を終えて、2月13日に帰国した日本代表の森保一監督が前向きに語った通り、1月21日の今季ブンデス後半戦の初戦フランクフルト戦で新天地デビューした上月のインパクトは凄まじいものがある。

 吉田麻也(シャルケ)や鎌田大地(フランクフルト)らカタール・ワールドカップの代表主力が揃ったゲームで、彼ら以上のアグレッシブさを披露し、一気に脚光を浴びた上月は、続く24日のライプツィヒ戦で新天地初ゴールをゲット。1-6で大敗したチームの一服の清涼剤となった。
【動画】クロアチア代表DFグバルディオルを翻弄!上月壮一郎が決めた見事なブンデス初ゴール
 その後もケルン、ボルシアMG、ヴォルフスブルクとの試合に連続出場。シャルケ公式の1月の月間MVPに選出されるという華々しい異国での一歩を踏み出したのである。

 上月の魅力は、何と言っても、大胆なドリブル突破と縦への推進力だ。

「こっちはほとんど個人のサッカー。日本は組織やチーム11人で戦う感じですけど、こっちに来て改めて感じるのは、個人の能力で何とかしないといけないということ。みんな『別の競技』と言いますけど、ホントにそうだと思う。最初は戸惑ったんですけど、今はもう理解しましたし、今、そこに向き合えているのはすごく楽しいですね」と、本人は目を輝かせる。
 
 シャルケのトーマス・ライス監督も、上月のスピードと打開力を高く評価しているからこそ、継続的に起用し続けている。その意図が分かっているから、彼は積極果敢に敵に挑み、ゴールを目ざして突き進む。怖いもの知らずの姿勢は森保監督が称賛した通り、見ていて本当に清々しい。

「監督が僕を出してくれている理由というのは、守備の強度だったり、ボールを持った時に1対1で仕掛ける部分だと思う。それをしなかったら僕は出ていない。毎試合、意識的にチャレンジしようと考えています。そうしないと自分の成長にならないですし」と、上月は語気を強める。

 ただ、デビューから5試合を消化し、縦へのチャレンジが読まれ始めているのも確かだ。ヴォルフスブルク戦では、対面に位置した敵の左SBパウロ・オタビオに激しいマークを受け、なかなか前に行かせてもらえなかった。彼のみならず、左CBのファン・デ・フェンもカバーに入って2人がかりで止められるシーンもあり、「上月包囲網」は徐々にドイツで広がりつつあるようだ。

「今回は何もやらせてもらえなかった印象があります。縦一辺倒だと全部読まれてしまう。相手(オタビオ)もスピードがある選手だったので、そういう時こそ、自分だけじゃなくて周りの選手を使ったりとか、裏のランニングでも一発でかわす攻撃だったりをやっていかないといけない。

 今はボールを受けて"タテタテ・ドリブル"しかないので、もっと幅を広げられるように練習からこだわって、チームメイトとコミュニケーションを取りながらやっていけたらいいなと思っています」と、新たな課題と向き合う覚悟だ。
 

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