「自分は慌てていなかった」仲間のために率先して戦う神村学園キャプテン大迫塁の“俯瞰力”。とっさの判断で同点弾を演出【選手権】

2023年01月04日 松尾祐希

「全員ドリブルで抜いてやろうかなと」

腕章を託され、大きく成長した大迫。同点ゴールにつながるロングパスは見事だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権準々決勝] 青森山田1-2神村学園/1月4日/等々力

 誰もが虚をつかれた。0-1で迎えた後半16分、神村学園のMF大迫塁(3年/C大阪加入内定)は流れを変えるべく、ある行動に出た。

「たぶん、みんな攻め急ぐ場面だと思う。普通なら。でも、自分は慌てていなかった。正直、あそこでプレッシャーを掛けてきたら、全員ドリブルで抜いてやろうかなという気持ちでいるぐらいでしたから」

 ゴールキックの場面で、自陣のペナルティエリアにスルスルと降りていく。相手FWがその動きに察知して、素早くリスタートさせないように進路を防ごうとしたが、意に介さなかった。

 GK広川豪琉(3年)にパスを要求すると、ボールを持ち出して左足で前線にロングパスを送る。ハーフウェーラインを超えた位置でFW福田師王(3年/ボルシアMG加入内定)が競ると、背後から飛び出してきたFW西丸道人(2年)がボールをキープ。そのまま前進して4人に囲まれたが、2年生FWは思い切りよく左足を振り抜き、相手DFの股下を抜く一撃でチームは同点に追いついた。

 先制点を許し、相手のペースになりつつあった。そうした状況下で、とっさの判断で意表を突き、同点弾を演出した大迫。このゴールの5分前にはCKを得ると、スタンドを煽って会場の雰囲気を変えようとするなど、様々な工夫を凝らしながら、チームのために何ができるかを懸命に考えていたのは言うまでもない。
 
 誰よりも落ち着いて構え、ゲームの展開に応じてできることを探していく――。チームリーダーの振る舞い、同点弾の演出、そしてチームは逆転した。

 有村圭一郎監督から"今年は大迫のチーム"と言われるほど、神村学園に欠かせない存在だ。一言で言えば、チームの大黒柱。福田がいくらゴールを決めようと、下級生の左SB吉永夢希(2年)や西丸が結果を残しても、チームを引っ張れるのは自分しかいない。

 大迫はどんな時も全体を俯瞰し、今できることに集中して仲間のために戦ってきた。そこは最終学年を迎えて、大迫が最も成長したと言える部分だろう。

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