“33歳の海外組”――日本サッカーを変える柴村直弥の「スキル」

2015年11月09日 サッカーダイジェスト編集部

メンタルの成長に自覚なし。スキルアップのみが、次の扉を開いた。

湘南に練習参加した柴村。海外で鍛え上げた己の技術を武器に、J復帰を目論む。

 すでに来季のJ1残留を決めている湘南に、10月29日から数日間、ひとりの男が練習参加をしていた。
 
 柴村直弥、33歳。
 
 今年7月までポーランド2部のOKSストミール・オルシュティンで活躍したDFだ。
 
「約5シーズン、海外で色々な経験を積み、選手として成長できたという実感があります。以前、Jリーグでプレーしていた頃は、たいした活躍はできませんでしたが、今の自分の姿で再び、日本で表現できればと思い、チャレンジしてみようと思いました」
 
 広島皆実高から01年に中央大に進学した柴村は、2年生時には二学年上の中村憲剛(川崎)らとともに関東リーグ2部で優勝。CBとしてチームを支えた。卒業後の05年からはJリーグを経由せず、新潟シンガポールに加入していきなり海外でのプロ生活を経験する。そして07年の帰国後は、福岡、徳島、鳥取、藤枝を渡り歩いた。
 
 迎えた11年1月、かねてからの夢だったヨーロッパでのプレーを目指して渡欧。ラトビア1部のFKヴェンツピルスに練習参加し、見事に契約を勝ち取った。ここではリーグ優勝に貢献するだけなく、ヨーロッパリーグでは3回戦に進出。日本ではあまり報じられていないが、ヨーロッパで確かな実績を残してきたのだ。
 
 その後はウズベキスタンの名門パフタコールに移籍し、ACLでは中東勢と渡り合ってきた柴村は、貴重な経験を持つ稀有な日本人選手と評していいはずだ。
 
「国外に行けば、僕らは外国籍選手なわけで、助っ人としてシビアな目で見られ、常に結果が求められます。気を抜くことなく試合展開を読まなければいけませんし、勝敗に直結したプレーをしなければいけない。そうした場に身を置いてきたことで、プレーヤーとして成長させてもらったという手応えは強く持てています」
 
 海外移籍を経た選手が発する「成長」とは、往々にしてメンタル面を指すことが多い。厳しい環境で日々を過ごすなかで気持ちが強くなったり、より真剣にサッカーに取り組むようになったとか……。
 
 しかし、柴村の場合は違う。
 
「メンタル面での成長は、そこまで自覚はしていないですね。サッカーと日々向き合って過ごしているという点では、日本でプレーしていた時と変わりません。その手法や様々な出来事への対応力などは変化していますが。
 
 海外で成長させてもらったのは、主にプレー面についてですね。先ほどもお話しした試合展開を読む力もそうですし、プレーエリアも大きく広がりました。プレーヤーとしてのスキルが高まったと感じています」
 
 答はシンプルだ。ヨーロッパ、そしてアジアの地で、なによりも結果が求められる"助っ人"として生き抜いてきた柴村は、ただひたすら、フットボーラーとしての技術を磨き続けてきた。スキルアップのみが、次の扉を開いた。
 
「この後も来季に向けて練習参加などをさせてもらい、プレーを見てもらえればと思っています」
 
 ハイレベルかつシビアな世界で研鑚を重ねてきた男のピュアな貪欲さや経験値、その特別なスキルこそ、国際舞台で思うように勝ち切れない日本サッカーに不足している部分なのかもしれない。
 
 柴村の新たな挑戦に期待したい。
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