【なでしこリーグ】ベレーザが制した今季のリーグ戦を総括! “W杯効果”が見られた一方で…

2015年11月04日 西森彰

“純血主義”に別れを告げたベレーザが勝負強さを発揮。

5年ぶりにリーグチャンピオンとなったベレーザ。選手の特長が上手く噛み合い、シーズンを通じて質の高いサッカーを披露した。 (C) J.LEAGUE PHOTOS

 10月31日のなでしこリーグ・エキサイティングシリーズ第4節で、ベレーザが千葉レディースを2-0で下し、5年ぶり13回目のリーグ制覇を果たした。
 
 昨季まで4年連続で2位に終わっていたベレーザの復権は、これまでの12回の優勝とは、少々意味合いが違う。下部組織・メニーナ出身者が大部分を占める「純血主義」に別れを告げ、阪口夢穂、有吉佐織、山下杏也加、そして今季加入した上辻佑実ら、外部出身のタレントを招き入れての戴冠。森栄次監督が「これまでのウチは、パスをつなぐ地上戦ばかりだったので、新しい武器になった」と語る上辻のセットプレーをはじめ、「ベレーザスタイル」に足りないものを外様組がもたらした。
 
 一方で、ボールを大事にする従来のチームのベースも岩清水梓、原菜摘子、田中美奈、村松智子ら生え抜きが、しっかり維持した。また、籾木結花、清水梨紗、長谷川唯、隅田凛らU-19組の成長で、選手層は質量ともにアップ。これまでのように、常に主導権を取りにいく形だけでなく、きちんとリトリートしながら鋭いカウンターを繰り出す新しい姿も見せた。集中した守備を披露したレギュラーシリーズ15節のINAC戦は完勝を収め、以後も、森監督の采配のもと質の高いサッカーを続けた。
 
 対して、2年ぶりの優勝を目指したINACは独走体制に入りかけた時期もあったが、その都度、ベレーザとの直接対決で敗れ、逆転を許した(レギュラーシリーズ最終節は首位で迎えたがベレーザに逆転された)。
 
 優勝を逃した要因はいくつかあるが、まず、代表組のコンディションが挙げられる。今季は早い時期から走り込みを行ない、仕上がりの良さを見せた。また後半に勝負をかけるゲームプランも奏功し、6月の女子ワールドカップによる中断期間までは好調を保った。しかし、澤穂希を筆頭にベテラン選手の蓄積疲労が、中断明けに噴き出した。
 
 さらに、クラブの将来を見据えた松田岳夫監督の采配も影響した。「練習でいいパフォーマンスを見せる選手を、試合でも使うという原則は崩したくない。コミュニケーション、コンビネーションの点で問題があったかもしれないが……」と語ったように、指揮官は安易にベテランに頼ることなく、2年目の伊藤美紀ら若手を抜擢するやり方を貫いた。ただ、レベルの上がった現在のなでしこリーグを勝ち切るうえではそのやり方が足枷となった。

次ページ独立系クラブはINACを除き苦戦を強いられる。

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