会場の8割を味方につけた森保ジャパン、クロアチア戦の敗因は“恐れ”。ブラジル人記者が「もっと日本を見ていたかった」という理由【W杯】

2022年12月09日 リカルド・セティオン

日本のPKはシュートというよりもGKへのパスに近かった

主導権を握りながらクロアチアに敗れた森保ジャパン。(C)Getty Images

 日本対クロアチア戦、私はVIP席で見ていたのだが、気が付けば周りにいる裕福そうなカタール人はみな日本を応援していた。おそらく、スタンドの8割強の人が日本を応援していたと思う。その光景は印象的だった。思わず声援を送らずにはいられない、日本はそんなチームだった。

 ここまでプレーした4戦全てで、勝敗にかかわらず日本は試合の主役だった。初戦では、これまでワールドカップで4度の優勝を誇るドイツを破り、世界を驚かせた。2戦目、誰もが期待していたのにもかかわらず、コスタリカに負けてこれまた皆を驚かせ、3戦目には、それまでの全出場国の中で一番良いプレーをしていたスペインを破って喝采を浴びた。そしてクロアチア戦だ。

 この試合、日本はクロアチアより完璧に上回っていた。それまでの3試合ではすべて前半のパフォーマンスが悪かったが、その課題を乗り越え、立ち上がりから果敢なプレーを見せた。
 
 ボールを持ち、試合を支配し、スピードを駆使し、ゴールを脅かすのは常に日本だった。そんな中で生まれた前田(大然)のゴールは、プレーの組み立てと戦術の賜物で、まさに考えぬかれた得点だった。そして何より決して力を出し惜しみしない全力なプレー。これには多くの人が感動しただろう。

 一方、クロアチアは(ルカ)モドリッチもどこにいるかわからない。チームとして何がしたいのかわからない。ぼやけたプレーしか見られなかった。

 だが、後半になると、日本のパフォーマンスの質は次第に落ちてくる。延長戦になると、スピードと闘志という日本の良さが消えていく。どんどん調子が上がっていった今までの試合とは真逆だ。私はそれを「恐れ」から来るものではないかと思った。

 前半に先制したことで、日本はこの先にある未知の地、ベスト8に大きく近づいた。そのため、後半は立ち上がりから失点を恐れてDFを残し、思いきりが悪くなる。55分に同点に追い付かれ後も逆転を恐れ、ますます良さが消えていった。

 そして、「恐れ」が最も顕著に出たのがPK戦だった。メンタルをコントロールできず、4人中3人が失敗してしまう。

 PKは技術的に言うならば、言うまでもなく一番点を取るのが簡単な方法だ。データから言うとGKが止める確率は12%。ただキッカーが恐怖心を抱いてしまうと、その確率は一気に高くなってしまう。日本はまさにその状況に陥ってしまった。悪いが彼ら蹴ったボールはシュートというよりもGKへのパスに近かった。GKの裏をかくようなキックはなく、あまりにも素直に蹴ってしまった。
 

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