モウリーニョやザッケローニのように――来季から町田を率いる黒田剛新監督、自信の根拠は「プロ出身の監督よりもアドバンテージがある」

2022年12月08日 郡司 聡

「こういうチャレンジは日本サッカー界のなかでも新しい第一歩になるのかなと」

来季から町田を率いる黒田監督。就任会見のフォトセッションでゼルビアの「Z」ポーズを決めた。写真:田中研治

 プロクラブの指揮官として迎えた初の晴れ舞台――。

 1時間以上にも及ぶ就任会見を終えた町田の黒田剛新監督は、息つく暇もなく、囲み取材に応じた。ただ、現状の立場はまだ青森山田高サッカー部の総監督。「まずは最後の選手権があるし、そこで選手たちに良い思いをさせたいので、全力集中で臨む」と前置きしたうえで、会見後の心境をこう語った。

「選手の会見にはたくさん立ち会ってきましたが、会見を終えて、いよいよだなと気持ちが高まってきました。いろいろと支えてくださっている方々のためにも……という気持ちは強いです。まずは選手権を戦い抜き、良い結果を得ることが先ですが、選手権が終われば、一気に町田モードに切り替えていきたいと思います」

 高体連の指導者がストレートにJクラブの監督に就任するステップアップの形は、日本サッカー界において、初めてのこと。かつて市立船橋高で一時代を築いた布啓一郎氏は、日本協会のナショナルコーチングスタッフを経由してから、群馬を率いたため、黒田新監督のようなルートは前例が見当たらない。

 現役選手としてのキャリアを大阪体育大で終えている黒田新監督は、プロ選手の経験がないジョゼ・モウリーニョ監督(現ローマ)や、アルベルト・ザッケローニ元日本代表監督を引き合いに出しつつ、自身の新たな挑戦の意味について、こう話した。

「プロ選手を経験しなくても、世界的名将と言われる優秀な指導者が世界にはゴロゴロといるなかで、高体連出身の指導者であろうとなんだろうと、力を発揮して結果を出し、そこに信用、信頼が生まれるのならば、こういうチャレンジは日本サッカー界のなかでも新しい第一歩になるのかなと。波乱万丈の人生ですが、僕自身の今回の決断が、日本サッカー界の明るい未来につながれば良いなということも、今回監督を引き受けたきっかけのひとつです」
 
 そんな野心家の脇を固めるコーチングスタッフは、育成畑で実績を挙げた人物が集結したことも、黒田新監督のチャレンジを象徴している。"参謀役"を選定するにあたって、黒田新監督は金明輝ヘッドコーチと山中真コーチの着任を熱望したという。

"右腕"となる金明輝ヘッドコーチについては「現在のサガン鳥栖を作り上げ、西日本の指導者の第一人者」として最大級にリスペクト。「Jのトップも、育成のイロハも知っている」と"一本釣り"に成功した。また山中コーチに関しては、柏での実績を高く評価し、「お互いができないことを補いながら、隙のないコンセプトを作り上げる」ために欠かせないコーチングスタッフであることを強調していた。

「トップ・オブ・トップの育成スタッフが一堂に会し、J2トップクラスのコーチングスタッフが集まった」と黒田新監督。3者が奏でる"ハーモニー"により、「いつも自分たちのサッカーを表現できる自信に満ちたチームを、1日でも早く構築したい」と息を巻いた。

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