【藤田俊哉の目】敵の周到な準備と柔軟な戦い方に日本の勢いはねじ伏せられた。ベスト8がとても遠く感じた一戦だった【W杯】

2022年12月08日 藤田俊哉

リードを保って逃げ切ることができるかどうか

ラウンド16のクロアチア戦はPK負け。悲願のW杯8強はまたしてもあと一歩及ばなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタール・ワールドカップ ラウンド16]日本1(1PK3)1クロアチア/12月5日/アル・ジャヌーブ・スタジアム

 前回大会準優勝のクロアチアの試合巧者ぶりに、ただただ脱帽するしかない。

 1ー0で迎えた55分、クロアチアのペリシッチのヘディングシュートがゴールネットを揺らした。日本が失点を許したそのシーンを見た瞬間、私は「えっ!」と思わず声を出してしまった。

 驚いた理由は、2つある。1つ目は、その時間が決してクロアチアの時間帯ではなかったということ。2つ目は、私が見る限り、そこまで危険を感じないクロスボールによる単調な攻撃だったということだ。

 もっとも、ロブレンが蹴ったクロスボールは鋭いカーブがかかっていて、冨安健洋と伊東純也のマークが甘くなった瞬間を狙ったものだった。

 しかし、だからといって、クロアチアの猛攻を受けて日本の守備ブロックが崩されていたわけでもなければ、鋭いカウンターを受けて最終ラインが乱れていたわけでもない。

 そんな状況下で、クロアチアはクロスボールによって同点とすることに成功したのだ。

 クロアチア側からしたら、スペイン戦やドイツ戦を分析しての攻め方だったのかもしれない。5バックでブロックを敷いてくる日本に対して、やみくもに人数をかけて攻めたら、日本最大の武器である両サイドの三笘薫や伊東のスピードに乗ったカウンターを受けるほうがリスクだと感じていたかもしれない。後半、日本に2点目を奪われたら、さすがのクロアチアも冷静さを失ったはずである。
 
 わずか1失点でグループステージを突破してきたクロアチアから先にゴールを奪った日本の戦いぶりは賞賛に値するが、それ以上に1失点したあとのクロアチアの試合巧者ぶりはさすがと言うしかない。

 日本のカウンターを警戒して裏へのロングボールを入れたり、高さで勝負したり、そして得点シーンのようにシンプルなクロスボールでマークの隙をついてみたり……。あの手この手で、クロアチアは状況に応じて攻め方を変えてくる。

 そうした柔軟でタフな戦い方こそクロアチアのサッカーと言える。状況を瞬時に判断し、自らの決断によってプレーする習慣から身についたものだ。

 日本が今大会初めて先制する展開となったクロアチア戦は、1点のリードを保って逃げ切ることができるかどうかが勝敗の分かれ目だった。結果として、その経験がなかったチームが、百戦錬磨のクロアチアに「わずかな隙」を突かれて同点にされた時点で勝敗は決したと言っていい。

 PK戦では、前回のロシア大会のような無類の強さを見せつけられ、日本のベスト8への挑戦はまたしてもあと一歩及ばなかった。

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