【戦術考察】「たった6分間のリスク」でスペイン代表を逆転。日本代表の実行力には脱帽だ【W杯】

2022年12月02日 白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

前半は守備こそ良かったが攻撃が…

後半に投入された堂安(8番)が同点ゴールを決め、三笘(9番)が決勝ゴールをアシストと交代カードも当たった。(C)Getty Images

[カタールW杯グループステージ第3戦]日本代表 2-1 スペイン代表/現地時間12月1日/ハリファ国際スタジアム
 
 日本の守備的な入り方は容易に想像がついた。スペインはカタールW杯で最もポゼッション率が高いチームであり、ファイナルサードに入ってからの加速も鋭い。不用意なプレスをすれば軽くかわされて、瞬く間にピンチを迎えてします。
 
 だから守備時はミドル及びローの位置に5―4―1のコンパクトなブロックを敷いて、CF前田大然が敵CBをほぼ捨ててアンカーのセルヒオ・ブスケッツへのパスコースを消す戦い方は、戦力的な差を考えれば当然の選択だ。
 
 12分にアルバロ・モラタに先制点を奪われたものの、その後は配置を微調整しながらミドル中央ゾーンを分厚くプロテクトできる5バックの特性を活かしてなんとか凌ぐ。前半の守備は及第点だっただろう。
 
 ただ、攻撃は奪ったボールをどう展開するかの意識付けがやや曖昧。前田が相手のハイラインの裏を突くでもなく、むしろ不得意なポストプレーを強いられて簡単にロストするシーンもあった。久保建英が右サイドから左サイドに動きながらボールを捌いて展開し、最後は鎌田大地がフィニッシュした36分のシーンを除けば、ゴールの匂いがまったくしなかったのだ。
 
 前半を終えた時点のポゼッション率はスペインの79%で、日本はよく耐えたものの実質的にほぼワンサイドゲーム。しかも板倉滉、吉田麻也、谷口彰悟の3バック全員がイエローカードをもらった。このままの戦術的な振る舞いでは、後半も同様の展開になって逃げ切られる可能性が明らかに高かった。スペインは最終ラインからとことんパスを繋いでくるハイラインのチームであり、逆に言えばそのビルドアップを敵陣深い位置の初期段階で引っ掛けらればビッグチャンスに繋がる。どこかのタイミングでリスク承知のパイプレスが必要に思えた。
 
 迎えた後半、久保を堂安律、長友佑都を三笘薫に代えた日本だが、個人的にはそれよりも「このまま低い位置のプレス&ブロック守備のままなのか?」という点が気になっていた。そして47分、スペインがボールを自陣に下げた瞬間、前田が相手のCBとGKに猛烈なプレスを仕掛け、それをスイッチに後方の選手もどんどんラインを上げ、マンツーマンに近いハイプレスを仕掛けていった。
 
「おっ、後半はいくか。リスクかけて勝負にきたな」
 
 そう思った10数秒後、そのハイプレスの流れからボールを奪い取り、堂安が左足で強烈なミドルシュートを突き刺す。さらにそのまま前から奪いに行くハイプレス戦術は続き、51分には田中碧が逆転ゴールまで奪ってしまう。正直、驚きの展開だった。
 

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