【プロ仕様データ検証】全体スタッツはドイツ圧勝も、日本が逆転できた理由?冨安健洋は脅威の数値【W杯】

2022年11月24日 白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

ゴール期待値は明らかにドイツが上

後半から入った冨安健洋は流石のクオリティーだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタールW杯・グループステージ第1戦]日本代表 2-1 ドイツ代表/11月23日/ハリファ国際スタジアム
 
 現場で見ていても、日本代表にとっては少なくとも前半はほぼ勝ち筋が見えないゲームだった。それでも後半に盛り返してドイツ代表に逆転勝利。世界中の指導者やスカウトが使うプロ仕様のデータ『ワイスカウト』のスタッツを用いて、この歴史的な一戦を検証する。
 
●xG(ゴール期待値)
日本:1.86(前半0.21、後半1.63)
ドイツ:2.58(前半1.15、後半1.43)
 
●シュート
日本:合計12本(枠内3本、枠外6本、被ブロック3本)
ドイツ:合計25本(枠内9本、枠外9本、ポスト1本、被ブロック6本)
 
「あるシュートチャンスがゴールに結びつく確率=チャンスの質」を示す指標であるxG、そしてシュート数で見るとドイツが完全に上。ただ、数字の通り決定力が明らかに悪かった。後半のxGは日本が上回っており、後半は0本だった枠内シュートが3本まで増え、そのうち2ゴールと高い決定力を見せた。長友佑都や酒井宏樹は、「前半を1失点で抑えられたのが大きかった。2失点していたら全く違う展開になっていた」と振り返っている。
 
 
●ボール保持率
日本:27%(前半20%、後半36%)
ドイツ:73%(前半80%、後半64%)
 
●純粋ボール保持時間/ボール保持回数
日本:14分57秒/92回
ドイツ:39分55秒/114回
 
●平均ボール保持平均持続時間
日本:9秒
ドイツ:21秒
 
 ボール保持率はドイツが日本を圧倒。とくに前半は実に80%のボール支配率だ。攻撃時に4―2―3―1から3―2―5に可変するドイツに対して、日本守備陣のスライドが間に合わず、面白いようにボールを繋がれた。後半は日本が3―4―2―1にシステム変更して噛み合わせが明確になり展開が変わった印象に見えたが、それでもドイツが64%の保持率を誇った。ただ、「ボールが握ることが勝利とイコールではない」というのは、サッカーの真理の1つ。ボール保持持続平均時間もドイツが21秒、日本が9秒だが、それでも勝利したのは日本だ。
 
●パス成功率
日本:76%(前半66%、後半82%)
ドイツ:90%(前半92%、後半86%)
 
 パスに限ればドイツは試合を通じてほぼ安定していた。一方で日本は前半が成功率66%とかなり低い数値。前記した通りシステムの噛み合わせが悪かったため、苦し紛れのパスやクリアが多かった。それでも後半は頭から入った冨安健洋が21本中19本の成功と文句なしのパス出しを見せたこともあり、82%まで盛り返す。実際に75分のゴールは、鎌田大地から吉田麻也、冨安、三笘薫とクリーンなパスを繋いで前進し、南野拓実のクロスのこぼれ球を堂安律が押し込むという展開だった。
 
 
●デュエル
日本:186回/83勝利(前半49%、後半40%)
ドイツ:186回/96勝利(前半45%、後半56%)
 
●プレスインテンシティー(PPDA)
日本:15.8(前半25.2、後半9.9)
ドイツ:10.5(前半10.2、後半10.7)
 
 体格で勝るドイツに対して、日本はデュエルでほぼ互角の数字と大健闘。しかもプレスインテンシティー(守備時のプレス強度)は総合的に大きく上回っている。やはり頼りになったのはブンデスリーガで「デュエル王」として名を馳せる遠藤航、そしてフィジカルの強い酒井宏樹で、いずれもチーム最多26回のデュエルを仕掛け、こちらもチーム最多の11回勝利している。長友が「戦術や技術よりもまず大事なのは気持ち。相手を潰すつもりでみんな戦った」と試合後に語っていた通り、日本は気持ちのこもったファイトを見せ、歴史的な勝利に繋げたのだ。
 
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
 
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