【甲府】腑に落ちない3季連続のJ1残留。悪循環のサイクルを止めない限り、明るい未来は開けない

2015年10月25日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

「結果だけを求めては、観ている人たちのためにも良いとは言えない」(阿部拓)。

3季連続のJ1残留を果たすも、このままでは来季も同じ道を歩みかねない。明るい未来を紡ぐためにも、なにかしら手を打つ必要性も感じられるが…。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 ホームに広島を迎えた今節、引き分け以上で自力でのJ1残留が決まる甲府は、試合開始から両ウイングバックが最終ラインまで下がる5バックを形成し、広島の攻勢を凌ごうと目論んだ。
 
 しかし――。15分にドウグラスのスーパーボレーで先制点を与えてしまい、早くもプランが崩れると、30分にも追加点を許す。年間順位、そして、第2ステージで首位の広島を相手に致命的な2失点を喫したことで、勝負の行方はほぼ決してしまった。
 
 後半は反撃に出たが、したたかなゲーム運びを見せた広島の牙城は崩せず「完敗と言って良い内容」(山本)で敗北。幸い、年間16位の松本が鳥栖に敗れたため、3季連続の残留は決まったが、どこか腑に落ちない結果となり、監督や選手の顔には渋い表情が浮かんだ。
 
 今季を振り返ると、開幕から11試合で2勝9敗と低迷し最下位に沈んだが、佐久間体制へ移行後に守備を立て直してV字回復に成功。2試合を残して残留へ漕ぎ着けたのは評価できる。J1最低レベルと言われる年間予算のなか、降格を免れた戦いぶりは特筆すべきだろう。
 
 しかし、今後を見据えれば喜んでばかりはいられない。今季、前線の軸としてチーム2位の5得点を挙げている阿部拓はこう話す。
 
「J1残留が決まって充実感はもちろんある。ただ、結果だけにフューチャーしているのは、観ている人たちのためにも正直良いとは言えない」
 
 甲府が3季連続で残留を勝ち取ってきた戦法は、手堅く守り、ワンチャンスをモノにする、言わば、弱者の戦い方だ。潤沢とは言えない財政事情、毎年のように主力が引き抜かれていく宿命にあることを考えると、たしかに、結果と内容の二兎を追うのは容易いことではない。
 
 とはいえ、阿部拓が言うように、結果ばかりにこだわっていれば、チームとして成長を見込むのは困難だろう。志が高く、魅力的な戦いを目指さないのであれば、ファンだけでなく、それこそ、選手の心が離れてしまっても不思議ではない。このままではおそらく、伸び盛りの中心選手の流出は止まらず、ベテラン過多の年齢構成も変わらない。
 
 この問題を「プロビンチャの宿命」のひと言で片づけてしまっては先に進めないだけに、遅かれ早かれ、なにかしら手を打つ必要性が感じられる。
 
 佐久間監督は広島戦後、今季限りでの退任の意向を表明。来季は新体制での船出となるが、結果を追うスタンスは変わらないのか、それとも……。クラブの決断に注目したい。
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
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