野心が色濃く感じられたカナダ戦の45分間。高い領域を見据える久保建英に託されたタスク

2022年11月18日 元川悦子

誰かがやらなければ、停滞感は打破できない

久保は見せ場を作ったが、守備に忙殺されるシーンも多かった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 カタール・ワールドカップ(W杯)前最後のテストマッチとなった11月17日のカナダ戦。森保一監督は直近のリーグ戦に出ていた吉田麻也(シャルケ)や鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)、伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)ら主力級を温存させた。

 そして、怪我明けの浅野拓磨(ボーフム)や板倉滉(ボルシアMG)、クラブで出場時間の少ない南野拓実(モナコ)をスタメンに抜擢するなど、コンディション調整を最優先に位置づけてゲームに挑んだ。

 前半の攻撃陣は1トップ・浅野の背後に右から相馬勇紀(名古屋グランパス)、南野、久保建英(レアル・ソシエダ)という並び。浅野が持ち前の快足を活かして鋭く前線へ飛び出し、相馬も局面打開をアピール。8分には柴崎岳(レガネス)の縦パスから相馬が電光石火の先制弾をゲット。いきなり結果を出すことに成功した。

 そうなると久保も黙ってはいられない。南野が中盤でドリブルでボールを運んで出したパスに反応。左サイドを駆け上がり、またぎフェイントを入れて左足を一閃。惜しくもゴールの枠を越えていった。

 久保の見せ場はこれだけではなかった。南野とハイプレスに行き、奪ったボールを思い切って打ちに行った35分の場面、田中碧(デュッセルドルフ)の左への展開から強引に打ちに行った45分のシーンなど、貪欲に得点への意欲を押し出していく。
 
 左肩脱臼の影響も多少なりともあったようだが、背番号11は「今日の試合だったら、まだまだやらなきゃいけない、と。もっと本番の相手は強いと思うので」と高い領域を見据えていた。

 そういった野心が色濃く感じられたのは、前向きな点だ。この日は相馬以外の攻撃陣が全体的に決め手を欠いた印象が強かっただけに、前半45分間プレーし、キレと鋭さを示した久保には期待が寄せられる。

 しかしながら、彼も守備に忙殺され、球際やデュエルの部分で苦戦したのも事実。対面に位置したカナダの右MFテイジョン・ブキャナン(クラブ・ブルージュ)の縦への推進力が凄まじく、日本は何度も右CKを奪われ、結果的にその1つを決められる形になったのだ。

 このカナダだけでなく、W杯対戦国のドイツ、コスタリカ、スペインにはいずれも右サイドに強力なアタッカーがひしめく。となれば、背番号11は粘り強く守らなければいけない時間帯が長くなる。

 そのうえで、一気にゴール前へ駆け上がってフィニッシュを決めるのはハードルの高い命題。ただ、それを誰かがやらなければ、日本の攻撃陣の停滞感は打破できそうもない。
 

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