【ブンデス現地コラム】ヘルタ・ベルリンの躍進を支えるダルダイ監督と原口元気

2015年10月22日 中野吉之伴

攻撃も守備も自ら仕掛ける能動的なスタイルを植え付ける。

15年2月からヘルタ・ベルリンを率いるダルダイ監督。情熱的な指導で選手に闘志を注入する。(C)Getty Images

 日本代表の原口元気が所属するヘルタ・ベルリンが、9節終了時で5位と順調な滑り出しを見せている。
 
 9節の3位シャルケとの一戦では見事な戦いぶりを披露した。19分にFWヴェダド・イビシェビッチが退場するアクシデントに見舞われ、27分に先制点を献上。しかし、粘り強い守備と敵の急所を抉るカウンターで対抗し、73分にはサロモン・カルーのゴールで同点に追いつく。ロスタイムに追加点を許して1-2で敗れはしたものの、数的不利に陥りながらも強豪シャルケを苦しめたチームにベルリンから駆けつけたサポーターは温かい拍手を送った。
 
 どんな状況でも最後まであきらめない――。それはハンガリー人のパル・ダルダイ監督が現役時代から体現しつづけてきたポリシーだ。ヘルタ・ベルリン一筋で、297試合に出場。常に全力で戦い抜くダイナモとして、ファンに愛された。
 
 残留争いを演じていた昨シーズン終盤(15年2月)にヘルタ・ベルリンの監督に就任。「このクラブを残留させるために、死ぬほど働いてみせる」という宣言どおり、熱いハートを前面に押し出した指導で、選手に闘志を注入した。同時に短期間で適材適所を見極め、残留へと導いてみせた。
 
 ダルダイは、精神論を振りかざすだけの監督ではない。ヨス・フルカイ前監督が築き上げたハードワーク主体の戦術を引き継ぎながら、攻撃も守備も自ら仕掛ける能動的なスタイルを植え付けた。
 
 両サイドバックには攻撃参加の得意なマルビン・プラッテンハルトとミッチェル・ヴァイザーを起用し、前線はカルーと新戦力イビシェビッチの2トップを採用。1トップを務めた昨シーズンは敵DFに潰されるシーンが頻繁に見受けられたカルーは、新たなパートナーがもたらす相乗効果についてこう語っている。
 
「ヴェダド(イビシェビッチ)がディフェンダーを引き連れてくれるから、僕は空いたスペースに飛び込むことができる。おかげでシュートに持ち込めるシーンが増えているんだ」

次ページ堅い絆で結ばれた選手と監督の信頼関係こそがなによりの強み。

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