他力でJ1残留、7季連続の無冠。岐路に立つガンバ大阪、来季監督の選定と絶対的な得点源の確立がカギ

2022年11月12日 下薗昌記

今季を象徴したスコアレスの鹿島戦

クラブ史上2度目の悲劇は回避したG大阪。最後に粘りを見せたが、シーズンを通じて低空飛行を強いられた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 勝利すれば自力でJ1残留が決まるはずだった最終節の鹿島戦。4試合連続の無失点を達成した守備陣の踏ん張りもあって最低限の勝点1を手にしたものの、ガンバ大阪のJ1残留はあくまでも他力によるものだった。

 遠路はるばるアウェーの地に駆けつけたサポーターは、どん底だったチーム状態を立て直した松田浩監督に「松田、オレ!」と盛大なコールを繰り返し、シーズンの最終盤に意地を見せた選手たちを称えたが、カタルシスを感じさせる光景だと美化するわけにはいかないだろう。

 今季もチームを支えた守護神、東口順昭は試合後、キッパリと言った。「今年に関しては自分たちの力不足だし、それをしっかりと受け入れたい」。

 コロナ禍による不運で残留争いを強いられた昨季と異なり、今季のG大阪はシーズンを通じて低空飛行を強いられた。リーグ戦のみならず、ルヴァンカップでは宿敵、C大阪との同組を勝ち上がれず、天皇杯もベスト16で敗退。7シーズン連続の無冠が続いている。

 今季のG大阪を象徴したのが、0-0で終わったアウェーの鹿島戦だった。

 10本のシュートを放った鹿島に対して、G大阪は後半終了間際に宇佐美貴史が苦し紛れに枠外に放ったシュート1本のみ。

 日韓の代表経験者を数多く擁し、その顔ぶれだけを見れば残留争いに身を投じるチームでないのは明らかではあるものの、得失点差は最下位の磐田に次ぐ、リーグワースト2位。
 
 松田監督の就任後、10試合で7試合が無失点という堅守によって救われたG大阪ではあるが、総得点は1試合平均1点に満たない33得点(34試合)。

 38試合を戦ってやはり33得点だった昨季よりは改善されているものの、もはや攻撃サッカーの表看板は下ろしたも同然の状態が続いている。

 常勝軍団復権の道のりが決して容易いものではないことをクラブも承知済み。昨季まで大分を率いた片野坂知宏前監督に白羽の矢を立てたのは、今季のタイトル争いではなく、チームの確固たる土台を作るのが目的だった。

「ガンバのスタイルという部分があるので、またガンバのスタイル、カラーを取り戻したい」。抽象的な概念ではあるものの、「ガンバのスタイル」と言えば、かつて西野朗監督が率いた時代の攻撃性を想起する人は多いだろう。

 西野体制と長谷川健太体制をコーチとして支えた、片野坂前監督はうってつけの人材だったはずだ。

 しかし、エースの宇佐美が3節の川崎戦でアキレス腱断裂の重傷を負い、戦線離脱。さらに東口も3月に右膝内側半月板損傷の手術でチームを離れ、片野坂前監督は攻守の軸を欠いたまま、シーズン序盤の指揮を執らざるを得なかったのは不運だった。
 

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