【小野伸二が語る中村俊輔】一緒にプレーしていると、とにかく楽(笑)。自分の思い通りに進む。それもまた俊さんの凄さ

2022年11月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

無邪気な少年時代を思い出させてくれる存在

日本代表で俊輔(左)とともに“黄金の中盤”を形成した小野(右)。FKの場面では「横に立ちましたけど、蹴る気なんて一切なかった」と笑顔で振り返る。(C)SOCCER DIGEST

 かつて共に戦い、敵として激しく争った男たちが稀代のファンタジスタを語りつくす――サッカーダイジェスト渾身の一冊『中村俊輔 引退特集号』で戦友が寄せた"熱き言葉"。本稿では小野伸二(札幌)のメッセージをお届けする。

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 思い返すと若い頃、僕と俊さんは中盤の攻撃的な選手として比較対象にされがちでしたよね。でも、俊さんの凄さというのはずっと昔から知っているし、「この人はあまりにもレベルが違うな……」と思いながらプレーを見続けてきたので、僕からしてみれば、俊さんと比較されるなんて間違っていると思っていました。あまりにもおこがましい。

 光栄なことではありましたけど、本音を言うとそのくらいに差があると自分では思っていました。俊さんのほうが圧倒的に上ですから。

 俊さんと一緒にプレーをしていると、無邪気にボールを追いかけていた少年時代の日々が思い出せて、いつも本当に楽しかった。そういう気持ちにさせてくれる選手という意味でも俊さんはもの凄いと感じていましたから。年齢こそ近くて親しくさせてもらってはいましたが、とても偉大な存在でした。
 
 引退については報道で知りました。その瞬間はとても寂しい気分にもなりましたが、別に俊さんと一緒にサッカーができなくなるわけでもなんでもないし、これからはプロの舞台で対戦できなくはなりますけれど、公園とかで一緒にボールを蹴ったりは変わらずにできるわけですから。

 引退が発表された直後は、自分のSNSにちょっとしたメッセージを記そうともしたのですが、それも途中ですべて消してしまいました。繰り返しになりますが、お別れするわけじゃないし、会えばまたいつでも一緒にボールが蹴れるので。笑顔で「お疲れ様でした」と伝えたいと思います。

 こうして話していると、あらためて俊さんと一緒にプレーをしていた頃のことが思い出されてきます。それこそ日本代表でチームメイトだった時は、僕が次にどういったプレーがしたいのかを俊さんはいつもすぐに感じ取ってくれて、一番良いところにパスを蹴ってくれるし、一番良い場所にサポートしに走り寄ってくれるんです。
 

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