得点王と森保J守護神を擁する清水はなぜ降格したのか?フロント、監督、選手を代えても長引く低迷の背景にあるクラブの“謎”

2022年11月08日 前島芳雄

後半アディショナルタイムの失点で勝点12を失う

タレントを抱えながら、17位で降格した清水。(C)SOCCER DIGEST

「なぜだ?」「おかしいだろ!?」

 最終節・札幌戦が終わった直後、試合中継に映し出された清水サポーターたちの表情を見ていると、そんな心の声が聞こえてくるかのようだった。

 クラブ30年の歴史の中で初めてJ1得点王が誕生し、最後尾にはカタール・ワールドカップに出場するGK権田修一がいる。その他のポジションを見ても実力者が揃い、トップハーフにいても不思議ではない戦力は整っている。にもかかわらず大事な終盤の7試合で一度も勝つことができず(2分5敗)、17位で降格が決まってしまった。

「なぜ?」の原因はひとつではないだろうが、その一部として明確なのは、多くのメディアやサポーターも指摘する後半アディショナルタイムの失点の多さだ。

 後半ラスト15分の失点は、全54点中の20点(37.0%)で、そのうちアディショナルタイムの失点が9。その9失点によって、4試合が同点から負けになり、4試合が勝ちから引き分けになった。単純計算で勝点12を失ったことになる。あと勝点5あれば残留できたと考えると、非常にもったいない損失だったことがわかる。
 
 7~8月は、ゼ・リカルド監督の戦い方が浸透し、夏の新戦力も活躍して5戦負けなしと良い兆しが見えていた。だが、8月20日の柏レイソル戦と9月10日の湘南ベルマーレ戦では、後半アディショナルタイムまで1-0でリードしていながら土壇場の失点でホームでの貴重な勝利を逃し、そのあたりからチームのリズムも崩れていった。

 ゼ・リカルド監督は就任当初から「自信を取り戻す」ことの重要性を訴えていたが、後半アディショナルタイムの失点が、選手たちの"つかみかけていた自信"まで失わせていたと言えるだろう。

 もちろん、その他にも降格の原因はいくつか挙げられる。ただ、4年連続で監督がシーズン途中で交代して下位の成績が続いてきたことを考えると、今季1年だけで問題を分析しても根本的な解決は難しいだろう。

「リアル半沢直樹」と呼ばれる山室晋也社長と大熊清GMが2020年に就任し、監督は4年間で6人が務めた。昨年は大型補強で注目され、選手もかなり入れ替わっている。ちなみに、2020年の最終節と今季の最終節を比べると、スタメンは10人変わっている(変わらないのは立田悠悟だけ)。

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