ネイマールの“改心”と若手の台頭で盤石なブラジル代表が抱える「世界一贅沢な問題」。G・ジェズスでさえW杯落選の可能性も…【現地発】

2022年11月07日 リカルド・セティオン

どの記事にもネガティブな言葉は見られなかった

ネイマール(10番)らタレントがずらりと揃うブラジル代表。(C)Getty Images

 カタール・ワールドカップのブラジル代表のメンバーがまもなく発表される。

 9月シリーズ(ガーナ、チュニジア)ではこれまでコンスタントに招集されてきたガブリエウ・ジェズスやガビゴール(ガブリエウ)、若手のガブリエウ・マルチネッリなどが招集外となった。

 それでも、ブラジルはとてもいいパフォーマンスを披露した。3-0で快勝した1戦目のガーナ戦は、ネイマール、ルーカス・パケタ、ヴィニシウス・ジュニオール、ラフィーニャ、リシャルリソンの5人が同時にプレーするとてつもないオフェンシブな布陣で臨み、前半に3点を入れた後は、ほぼ練習試合の様相だった。

 続くチュニジア戦は4-2-4のフォーメーションで、5―0で圧勝。ただ、残念だったのは、あまりにもチュニジアのラフプレーが多かったことだ。W杯前の親善試合は危険なプレーをしないのが通常だが、当たりは激しくついにはレッドカードが出る始末だった。

 それにしても、ブラジル代表を取り巻く空気が、これほど落ち着いたのは久しくなかった。その2試合においても誰もチームを非難しない。監督のことも、選手のことも、ネイマールのことさえも。これは非常に稀有だ。どの記事にもネガティブな言葉は見られなかった。
 
 私はこれまでW杯で戦うブラジルを10回以上見てきたが、大会前からこれほど温かい目で見られるチームは初めてだ。

 いったいブラジルに何が起こったのか、ほんの少し前まではチッチの解任が何度も叫ばれ、なかなかタイトルを勝ち取れない代表に愛想をつかす者が多かったのではないか。

 その要因の一つは日本とも関係ある。昨年の夏に行なわれた東京オリンピックでブラジルは金メダルを勝ち取った。これを境に続々と若い世代が成長してきている。

 リシャルリソンはオリンピック以前より活躍はしていたが、彼により自信をつけさせたのは東京五輪だった。彼はこの9月の2試合で3ゴールを決めた。マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるロイ・キーンは「彼は急速に伸びている。信じられない魔法を見ているようだ」と評している。そのほかにもオリンピック後にA代表に定着したブルーノ・ギマランイス、アントニー、マテウス・クーニャもメンバーに入っている。

 また五輪メンバーではないが、同じ頃に頭角を現してきたラフィーニャは、今や代表には欠かせない選手になりつつある。その2試合で2アシスト・1ゴールの活躍を見せた。

 そして、9月に初めて本格的に招集されたのがペドロだ。2試合で唯一聞かれた批判といえば、なぜ彼をもっと早く代表入りさせなかったのかということだった。25歳のペドロは2020年のW杯予選で14分ほどプレーしているが、その後は招集されず、最近のクラブチームでの活躍が認められ再び代表入りを果たした。

 後半から出場したチュニジア戦では、いきなり見事なゴールを決めている。これにはブラジル中が湧いた。なぜなら彼は今回の26人の中で唯一ブラジル(フラメンゴ)でプレーする選手だからだ。

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