【セルジオ越後】甲府の天皇杯初優勝は、一生語れる歴史的快挙。敗れた広島をはじめ、J1上位チームの課題や反省点が浮き彫りになったね

2022年10月17日 サッカーダイジェストWeb編集部

引いた相手に得点できないのは、実力が足りないから

PKストップのGK河田はヒーローになったね。(C)SOCCER DIGEST

 天皇杯の決勝戦は、PK戦の末に甲府が広島を下して初優勝を果たした。

 甲府はリーグ戦とは違い、ディフェンシブでブロックを作り、少ないチャンスをカウンターで狙っていた。先制点を決めた三平も良かったし、守備陣も格上相手にしっかりと守った。

 GK河田の活躍は広島の焦りを誘ったと思う。延長後半のPKストップに、PK戦でも1本止めた。ヒーローは河田だよ。

 一生語れるような歴史的な快挙だったね。河田は、甲府では永遠に語り継がれるのではないかな。選手やスタッフ、関係者、地元の人たちは、大いに喜んでほしい。今季のJ2でいま18位だけど、次はJ1昇格と定着を目ざしてもいいんじゃないかな。

 一方、広島はボールを持てたけど、外回しを強いられて、ミドルシュートも少なかった。延長後半のPKを決められなかった満田は、ルーキーで経験不足だったためか、とても緊張しているように見えた。それでもPK戦ではキッカーを務めて、見事に成功。スキッベ監督の評価は高いのだろう。

 チームとしては、120分では1-1の引き分けだったけど、格下相手に個人で打開できないのは課題だった。
 
 広島だけでなく、今大会はJ1上位チームの苦戦が目立った。鹿島は準決勝で甲府に負けたし、横浜はJ2の栃木に、川崎はJ2の東京Vに、ともに3回戦で敗れた。

 引いた相手に苦戦するのは、日本代表のワールドカップのアジア予選や、J1でも先日の横浜対磐田のゲームでも見られた。ポゼッションサッカーの課題とも言える。

 格下のチームが引いてきた時に得点できないのは、厳しく言えば実力が足りないからだ。極端な例になるけど、6月に来日したブラジル代表や、7月に川崎、浦和、G大阪と対戦したパリ・サンジェルマンは、相手に引かれても質の高さを出して、最終的には勝ち切ったよね。

 J1上位チームが負けた時の周囲の反応も気になった。川崎や横浜、鹿島が負けた時、監督更迭の声は聞こえてこなかった。リーグ戦を最優先にしているのかもしれないけど、名門はどんな試合でも負けは許せないもの。"ジャイアントキリング"という言葉があるけど、負けても悔しさが見られないならば"ジャイアント"ではないよ。

 ポジティブに喜んでいいのは甲府だけ。いろいろな反省点が見えた天皇杯だった。日本サッカーのレベルを上げるために、J1上位チームは敗因をしっかりと分析してほしい。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、77歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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