「ボールを持つたびに電撃を走らせる」途中出場でも輝く久保建英をソシエダ番記者が絶賛! ヘッドでのアシストも感嘆「見事な冷静さと明晰さ」【現地発】

2022年10月16日 ミケル・レカルデ

「剣を振るように切れ味鋭いドリブルを繰り出す」

ヘッドでのパスでナバーロ(右)のゴールをアシストした久保。(C)Getty Images

 今もアノエタの観客の記憶に強く残っている試合がある。2015年クリスマス休暇明け初戦のバルセロナ戦だ。

 焦点となったのが、リオネル・メッシのスタメン落ちだ。当時のバルサの監督、ルイス・エンリケにはれっきとした理由があった。メッシは他の選手よりもバカンスを数日多く取った関係でチームへの合流が遅れ、コンディションが十分ではなかった。しかしその指揮官の決断は当時、試合に出続けることが当たり前だったメッシのプライドを傷つけた。

 試合は開始2分でソシエダが先制。メッシは1点ビハインドの後半頭から出場したが、動きが少なく、前線でボールが来るのを待っているだけ。アノエタの観客はチームの勝利(1-0)に喜びながらも、名実ともにNO.1の称号を得ていた選手のやる気なさげにプレーする姿に驚きの反応を見せた。

 この例が示すようにベンチスタートという監督の決断をどう受け止めるかは選手、状況次第で大きく変わる。ただその一方で、全ての選手がレギュラー向きであるわけではなく、途中出場向きの選手も存在する。ソシエダにもアレクサンデル・セルロトを上回る巨漢を利して、ゴールをねじ込んだミケル・ロイナスという印象に残る選手がいたし、その後もイニゴ・イディアケスやオスカル・デ・パウラがスーパーサブとして活躍を見せた。

 タケ・クボ(久保建英)はそのどちらのタイプにも属さない。いや、彼の場合はスタメン、途中出場を問わないのだ。ボールを持つたびに電撃を走らせ、しかも常に懸命にプレーする。ようはピッチに立つことが幸せなのだ。

【動画】角度のないところから絶妙ヘッド!久保建英の"珍しい"アシストをチェック

 ここ数試合、出場時間が増えていたことを踏まえ、ベンチスタートとなったヨーロッパリーグ(EL)のシェリフ戦でもタケはその持ち前の競争心を発揮した。試合は、セルロトのゴールでソシエダが前半ロスタイムに先制。イマノル・アルグアシル監督は、週末のセルタ戦を見据えて、そのまま90分間温存することもできたが、熱心にウォーミングアップに取り組む姿を見て、やる気を感じ取ったのだろう。

 61分、ソシエダがCKを獲得したタイミングで投入すると、タケはそのままコーナーアークに直行。観客もその瞬間を待っていたかのように大きな拍手で迎えた。

 アルグアシル監督は、開幕以来、様々なポジションでタケを起用しているが、この日は、右サイドでプレー。最初の10分余りは、闘争心を燃やしながら攻撃的に振る舞ったアリツ・エルストンドと、その後は、この試合がアノエタでのデビュー戦で、慎重な姿勢が目立ったアリツ・アランバリと縦の関係を構築した。

 もっともタケは右サイドのパートナーが誰であるかは関係なかった。独力で、剣を振るように切れ味鋭いドリブルを繰り出しては、相手DFに脅威を与えていた。DFラインの背後を狙ったメロディアスなクロスに反応したアンデル・ゲバラのシュートがクロスバーの上を越えた後だった。

 そのゲバラが送ったクロスを見事な冷静さと明晰さでヘディングで折り返し、ロベルト・ナバーロの3点目をお膳立てした。

 もうこの時点で勝敗の大勢は決したが、その後もタケは試合終了のホイッスルが鳴るまでゴールを追い求め続けた。ソシエダはこれで公式戦6連勝。ヨーロッパリーグは無傷の4連勝だ。決して満足することなく常にその先を目指すタケの人一倍の競争心がソシエダの快進撃を後押ししている。

文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

【動画】「足の振り速い」「めっちゃいいコースに打ってる」久保建英が決めた左足強烈弾をチェック

【PHOTO】新天地で増す存在感!レアル・ソシエダで輝く久保建英を特集!

次ページ【動画】角度のないところから絶妙ヘッド!久保建英の“珍しい”アシストをチェック

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事