アーセナル冨安健洋の現在地。プレミアでは出番減も、ELで好パフォーマンス披露。超過密日程の10月が勝負に【現地発】

2022年10月07日 田嶋コウスケ

新戦力やライバルの活躍により、ベンチスタートが続く

好調のチームのなかで、怪我により開幕から出遅れた冨安。ただ出場した試合では安定したプレーを見せている。(C)Getty Images

 アーセナルのDF冨安健洋が投入されたのは89分のことだった。

 10月1日に行なわれたトッテナムとの一戦。ユニホームに着替えて準備を終えると、DFベン・ホワイトとの交代で4-2-3-1の右SBとして途中出場した。出場時間が短く見せ場はなかったが、試合後は地元ライバルのトッテナムを3-1で下した貴重な勝利に、笑顔でチームメイトと喜びを分かち合った。

 この結果、アーセナルは7勝1敗で首位の座をキープ。ホームのエミレーツ・スタジアムでは「俺らがリーグトップ!」のチャントが響き渡り、好調のチームを盛り上げていた。

 ただ、冨安の状況は決して良好とは言えない。国内リーグ戦の先発は8節まで1度もなく、ここまで試合終盤に守備固めで投入される試合が続いている。位置付けは、右SBのバックアッパーだ。

 昨年8月にアーセナルに加わると、日本代表DFは右SBとして即座にレギュラーの座を掴んだ。堅実な守備と優れた足技を活かしたビルドアップで、それまで開幕3連敗を喫していたチームの軌道を修正する立役者となった。英メディアからは「2021−22シーズンにおけるベスト補強選手の1人」とまで評された。

 ところが、今シーズンはスタートで出遅れた。理由は、昨シーズンから抱える怪我の影響。7月から始まった米国ツアーには帯同したが、別メニューでの調整が続き、プレシーズンマッチは1試合も出場できなかった。8月5日のプレミアリーグ開幕戦も欠場し、好スタートを切ったチームの中で躓いた。
 
 こうした状況に加え、新戦力の活躍が冨安の序列に影響を及ぼした。首位を走るアーセナルで特に目覚ましいプレーを見せているのがフランス代表DFのウィリアム・サリバ。3シーズンにわたるレンタル移籍を終えて今シーズンからチームに復帰すると、CBとして冷静沈着な守備で最終ラインを支えている。まるで長年アーセナルの最終ラインに君臨してきたかのように、21歳DFは早くも柱となっている。

 そして、昨シーズンまでCBのレギュラーを務めたホワイトが、冨安の怪我により空いた右SBのレギュラーに抜擢された。CBのサリバとガブリエウ・マガリャンイス、右SBホワイト、左SBオレクサンドル・ジンチェンコによる4人の最終ラインが安定した守備で支え、8節まで「8失点」とリーグ2位の堅守を見せているのだ。

 しかも、チーム自体が上昇気流に乗っている。ミケル・アルテタ監督はこの4バックによる良質な連係を高く評価しており、怪我人が出ない限り最終ラインを固定している。かくして、冨安は国内リーグでベンチスタートが続いているのだ。

 さらにアルテタ監督は、冨安の起用に慎重な姿勢を示している。昨シーズン、スペイン人指揮官が冨安の復帰を急がせたことで、結果として日本代表の離脱期間が長引くことになった。指揮官は「同じ過ちを犯さない」と明言しており、冨安に無理をさせない起用が続いている。

 もっとも、冨安のパフォーマンス自体が低下しているわけではない。9月8日に行なわれたヨーロッパリーグ(EL)のチューリッヒ戦(2-1)では右SBとして先発フル出場。今シーズン初となる先発試合で攻守両方において安定感の高い動きを見せ、試合後は英メディアからも高く評価された。

 また、10月6日のELボデ/グリムト戦でも今季2度目の先発出場を果たし、質の高い守備で3-0の完封勝利に貢献した。8月の戦列復帰からマッチフィットネスとコンディションが上向いてきているのは朗報だ。

【動画】冨安健洋がフル出場!3発快勝したELボデ/グリムト戦のハイライトをチェック

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