退団騒動、出場なしに激怒…アセンシオがブーイングを拍手喝采に変えたプレーとは?【現地発】

2022年09月30日 エル・パイス紙

センスや才能に依存しない新たな選手像を構築する必要がある

今夏は去就に揺れたアセンシオ。(C)Getty Images

 チャンピオンズリーグのレアル・マドリー対ライプツィヒ戦(マドリーが2-0で勝利)で起こった出来事の一つがマルコ・アセンシオとサンティアゴ・ベルナベウの和解だ。

 アセンシオが後半ロスタイムにダメ押しの2点目を挙げてそれは決定的になったが、最初のきっかけになったのがその約20分前に自陣ペナルティエリア付近で見せたスライディングだ。そこからマドリーはフェデリコ・バルベルデを起点とするカウンターを繰り出し、ヴィニシウス・ジュニオールがゴール前で詰め、その跳ね返ったところをアセンシオがループシュートで得点を狙った。

 ボールはバーの上を越えていったが、アセンシオのボール奪取がもたらした決定機だった。そのプレーを境に、64分にピッチの登場したときにスタジアム全体から起こったブーイングが拍手喝采に変わった。
 
 確かにFKからトニ・クロースがセットしたボールを左足ダイレクトで合わせてネットを揺らしたゴールは、欧州屈指と名高いシュート力をまざまざと見せつけた一撃だった。しかしそれはアセンシオにとってはいわば想定内のプレーであり、事実、ここ数か月間、より完成された選手になるには、これまで以上に戦う意識を持ってプレーしなければならないと周囲からアドバイスを受けていた。

 アセンシオの実力は誰もが認める。しかし同時に彼が身を置いているのは世界最高峰のレベルだ。マドリーでレギュラーに定着し、2か月後に開幕するワールカップの最終メンバーリストに名前を連ねるには、センスや才能に依存しない新たな選手像を構築する必要があることを関係者は指摘する。

 アセンシオはカルロ・アンチェロッティ監督の構想においてロドリゴとバルベルデに先を越され悔しい思いをした。周囲が働きかける意識改革とこのチーム内での序列の低下はもちろん無関係ではないが、さらに状況を複雑にしているが去就問題だ。

 来年6月にマドリーとの契約が切れるアセンシオは、4月に長年連れ添ってきたオラシオ・ガッジョーリと袂を分かち、ジョルジュ・メンデスにエージェント業務を託した。マドリーが契約延長のオファーを提示しない中での大物代理人の登場で俄然、移籍の機運が高まった。

 アセンシオはキャリアの岐路を迎えていた。さらに6月のスペイン代表帯同中に行った発言は挑発的と受け止められ、近しい関係者にも波紋を広げた。「契約延長か移籍の二者択一あります。どちらを選ぶつもりですか?」。記者にこう質問されると、アセンシオは、「いいや、3つの選択肢があると思う。このまま残る選択肢もある。マドリーとの契約は1年残っているわけだからね」と、来夏フリーで退団する可能性を示唆したのだ。

 その6月の代表入りは、昨シーズン終盤、マドリーで存在感を発揮できなかっただけに予想外の出来事だったが、関係者との献身性に磨きをかける一連の取り組みを後押しする効果もあった。ルイス・エンリケは戦う姿勢を要求し、アセンシオは応えた。
 

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