【岩本輝雄】ピッチの中央に描きたかった“ひし形”。無得点のエクアドル戦、トップ下・南野への批判はちょっと違う

2022年09月29日 岩本輝雄

5人でボールを回しながら、相手を引き出すのも一案

トップ下で先発した南野。選手との距離感がもう少し近ければ、決定的な仕事が増えたんじゃないかな。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンチャレンジカップ]日本 0-0 エクアドル/9月27日/デュッセルドルフ・アレーナ

 日本はエクアドルを相手にスコアレスドロー。強豪国がひしめく南米予選は4位でワールドカップ出場を決めただけに、やっぱり手ごわかったね。

 目についたのは試合運びのうまさ。のらりくらりじゃないけど、行くところはガっと行くし、日本の状態を見て、引いて構えたりもする。ボールの動かし方も、ここは速く回す、ここは落ち着かせるとか、その使い分けが巧みだった。

 エクアドルはもともと、守備の堅いチームだけど、日本は攻撃面が今ひとつだったね。まず、柴崎と田中のダブルボランチがもう少しボールに関与したほうがいいと感じた。田中が相手のボランチの背後にもぐりこむ。悪くはない動きだけど、それによってビルドアップのテンポが上がらなくなるケースも見られた。

 田中はあそこまで高い位置を取らないで、ボランチでコンビを組む柴崎、センターバックの2人、どちらかのサイドバックを加えた5人がセットになってボールを回しながら、相手のボランチやサイドハーフを引き出すのも、ひとつのアプローチ。そうすれば、トップ下の南野ら2列目の選手がフリーになりやすくなるから、タイミングを見て縦パスを入れて攻撃をスピードアップさせたりもできる。

 あとは、前線の選手たちの距離感も気になった。少し離れすぎていたかな。両サイドの三笘と堂安はワイドにポジションを取ることで、相手の守備陣形を開かせるという意図があったと思う。でも、効果的なアタックはそこまで多くはなかった。

 状況によっては、三笘と堂安、さらにワントップの古橋、トップ下の南野が、もっと近い位置にいてもよかった。ピッチの真ん中で、4人が"ひし形"のような陣形を組めれば、そのエリアに縦パスが入った時に、よりコンビネーションを出せたんじゃないかな。

 距離が離れているから、南野にボールが入っても、エクアドルの素早いプレッシャーを受けて潰されてしまう。この試合で日本の10番はインパクトを放てず、批判の声も聞こえてくるけど、それには違和感を覚えたね。南野はやや不利なシチュエーションでのプレーを強いられているようにも見えたから。
 
 日本は、2-0で勝利した4日前のアメリカ戦から、エクアドル戦ではスタメン11人を総入れ替え。連係面で難しさはあったはず。その点も無得点に終わってしまった原因のひとつだろう。

 2試合が組まれた今回の9月シリーズで、日本は1勝1分の戦績。ワールドカップのグループステージに置き換えれば「勝点4」だ。本番を見据えれば、良いシミュレーションになった部分もあるはずだ。

 メンバー発表前、最後の強化キャンプで収穫も課題も見えたと思う。それらを森保監督がどう評価したのか。カタールに行く"26人"の顔触れが楽しみだね。

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、50歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを観戦&研究する日々を過ごす。

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