現地ベテラン記者が香川真司を密着レポート「ドルトムント再浮上の鍵は香川ら代表組のコンディション」

2015年10月07日 マルクス・バーク

バイエルン戦の敗因は指揮官の手腕にも……。

バイエルン相手に完成度の違いを見せつけられ、5失点の大敗を喫したドルトムント。代表ウィーク明けのマインツ戦までにチームの立て直しが求められる。 (C) Getty Images

 代表ウィークのためブンデスリーガは中断期間に入り、マルコ・ロイスや香川真司といったドルトムントのメンバーは自国の代表チームに合流した。今週、ドルトムントの練習場でボールを蹴っているのは、主にセカンドチームやユースチームの選手たちである。
 
 10月5日のバイエルン戦(ブンデスリーガ8節)で1-5の大敗を喫し、やるべき仕事が山積しているトーマス・トゥヘル監督にとっては、もどかしい状況と言える。
 
 バイエルン戦だけでなく、7節の昇格組のダルムシュタット戦でも2失点を喫するなど、ここ最近は守備の不安を露呈。「ゼロから始める必要はないが、正しいチーム戦術を再び練習から徹底する必要がある」とトゥヘルは語っていたものの、肝心の選手がいなければ手の打ちようもない。
 
 上昇気流に乗って開幕5連勝を飾った序盤戦こそ、トゥヘルが確立した新しいスタイルは称賛されたが、完成度はまだ不十分。その現実を突きつけられたのが、バイエルン戦だった。
 
 致命的だったのは、バイエルンに与えた3点目。1-2で迎えた46分、GKロマン・ビュルキと最終ラインの間に広大なスペースが生まれ、そこをレバンドフスキに突かれて痛恨の失点を喫した。
 
 敗因のひとつに挙げられるのが、トゥヘルの采配だ。
 
 不可解だったのは最終ラインのメンバーを大幅に入れ替えたことで、右からソクラティス・パパスタソプーロス、スベン・ベンダー、マッツ・フンメルス、ウカシュ・ピシュチェクという配置は、今シーズンで初採用だった。フンメルス以外はいずれも本職ではない位置でのプレーを強いられ、お世辞にも機能しているとは言い難かった。
 
 ディフェンスラインを統率するフンメルスも他の選手と同じくミスが目立ち、敗色濃厚となった終盤にはバイエルンの攻撃を受けるたびにチームメイトに文句を言っていた。
 
 心象を悪くしたのは試合後の発言だ。「(1失点目と3失点目の場面で)なぜ、ボアテングがあれだけプレッシャーを受けずにロングボールを蹴れたのか、理解できない」と前線の選手を暗に批判。主将として相応しい振る舞いとは言えない。
 
「マッツはチームメイトを批判する前に、まず自分の責任を探すべきだ。彼がキャプテンとして選手たちの良い手本になってくれたら、私は嬉しいのだが……」
 
 スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクはそう釘を刺した。CEOのハンス=ヨアヒム・ヴァツケも、フンメルスと話し合いの場を設けると明言している。もちろん監督のトゥヘルも、主将の言動を苦々しく思っているはずだ。
 
 フンメルスと同様、ロイスもドイツ代表に招集されている。怪我から復帰後、このエースの調子が上がらないのも、ドルトムントにとっては看過できない問題だ。代表チームでいつもと違った刺激を受け、復調のきっかけを掴んでほしいところである。
 
 代表ウィーク明けの10月17日には、トゥヘル監督の古巣であるマインツとのアウェーゲームが控えている。バイエルン戦で浮き彫りになった課題をどう修正するのか。トゥヘルの采配はもちろん、Aマッチ帰りとなる香川やロイスといった代表組のコンディションが勝敗の鍵を握るだろう。
 
文:マルクス・バーク
翻訳:円賀貴子
 
Marcus BARK
マルクス・バーク/地元のドルトムントに太いパイプを持つフリージャーナリストで、ドイツ第一公共放送・ウェブ版のドイツ代表番としても活躍中。国外のリーグも幅広くカバーし、複数のメジャー媒体に寄稿する。1962年7月8日生まれ。
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