“激闘”は間違いなかったコンペティティブな一戦。名古屋にとって川崎との1-1ドローは成長を確かめられた90分間に

2022年09月15日 今井雄一朗

様子見の要素も含んでいた前半を終え、後半は前に出る

右ウイングバックでフル出場の森下は、攻守両面でフル稼働。後半は温存していた足を爆発させ、面白いようにサイドの奥を破った。(C)SOCCER DIGEST

[J1第22節]名古屋1-1川崎/9月14日/豊田スタジアム

 こうして書くとやや皮肉にも見えてしまうが、今季の前回対戦から半年の月日を経て、名古屋が成長を確かめられた90分間にはなったと言える。

 ドタバタのシーズンインから布陣変更、夏の補強とチームの作り替えを繰り返してきた2022年の中で、ようやく一つの形が固まってきたタイミングでの川崎との対戦。「こういうレベルの高い相手と対戦すると、自分たちのレベルがはっきりと見えてくる」(レオ・シルバ)と、選手たちのモチベーションも高かった。

 延期にまつわる経緯については、リーグから名古屋に罰金を伴う処分も下っており、良くも悪くも話題性は十分。その結果として名古屋が存分に闘い、勝点をもぎ取ったことには収穫も感じる。

 川崎が攻め、名古屋が守るという構図は予想通りだったが、いかんせん川崎に元気がなかった。守る名古屋は明確な狙いを持って相手の攻撃に対応し、それほど前に出る回数は少なかったが、悪い手応えではなかったという。

「相手はすごく強いですけど、すごく嫌だなってシーンはなかった」と森下龍矢が言えば、中谷進之介も「危ないシーンもひとつありましたけど、あれぐらいは想定内」と涼しい顔。

 藤井陽也も自身の守備の対応としては反省しきりだったが、「連係の3人目とかについていくことだったり、しっかりチームとしてやるべきことはできた」と、全体としてのディフェンスについては問題なしを強調している。
 
 様子見の要素も含んでいた前半を終え、名古屋は後半に前に出た。システムをはっきりとアンカー式の3-5-2に変え、交代出場の永木亮太と内田宅哉が中盤に良い強度と運動量をもたらした。

 そこに「相手のサイドバックのところで走ったら絶対に優位になるというのは分かっていた」という森下が、温存していた足を爆発させ、稲垣祥や永木、藤井のフィードで面白いようにサイドの奥を破っていく。

 永木のフォロー、マルシーニョ番を一手に引き受けた中谷のバックアップも頼もしく、背番号17は「ベルカンプみたいなトラップしてましたね」と得意満面。その最中で川崎に先制されてしまったのはチームとしての反省点ではあるが、判定の微妙さを思えば気落ちも少なかった。

 失点に焦らず、チームとしての良い流れを継続した74分には、CKのこぼれ球を稲垣がダイレクトで叩き込み、同点に。目の前の人垣をものともせずに「良いところに来た」と左足をリラックスして振り抜いたキャプテンの一撃は、それまでの試合内容が報われる意味でも大きな価値があった。
 

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