冨樫ジャパン、開催国ラオスに4発快勝! 特異な環境下で両CBはいかに無失点に抑えたか【U-19代表】

2022年09月13日 松尾祐希

前日練習では内田篤人からクリアの手ほどき

U-20アジア杯予選の初戦で、日本は坂本(11番)の先制点を皮切りに、開催国ラオスを4-0で一蹴。好スタートを切った。写真:佐藤博之

[U-20アジア杯予選]日本4-0ラオス/9月12日/ナショナル・スタジアム(ラオス)

 一言で言えば、これぞアジアの戦い――。

 9月10日、来年3月に行なわれるU-20アジアカップの予選が開幕し、12日が初戦となったU-19日本代表はU-19ラオス代表と対戦。今予選のホスト国である難敵に対し、4−0の快勝を収めた。

 試合前に降った大雨の影響でピッチは田んぼのようにぬかるみ、あちらこちらに水溜りができている状況。試合前のウォーミングアップもピッチがほぼ使えず、ボールを蹴れたのもわずかな時間だけだった。

 キックオフ時間も30分遅延。「直前にもう少し(キックオフまで)時間が空くって言われて、空気がふわっとしてしまった」と永長鷹虎(川崎)が明かした通り、集中力を保つことは一筋縄ではいかなかった。

 それでも、冨樫剛一監督率いる日本は、試合が始まれば徐々にピッチやスタジアムの雰囲気に慣れ、21分に永長の左クロスから坂本一彩(G大阪)がヘディングで先制弾。勢いに乗ると、44分には再び永長の左クロスから山根陸(横浜)がヘッドでネットを揺らした。

 後半に入っても勢いは止まらない。63分には北野颯太(C大阪)にゴールが生まれ、7分後には途中出場の熊取谷一星(明治大)がトドメを刺した。

 ゴールラッシュを決め込んで危なげなく勝点3を手にした冨樫ジャパン。結果だけを見ればスムーズに勝利を手にしたように見えるかもしれない。だが、初戦や国際舞台でしか味わえない緊張感はもちろん、普段では考えられないようなアクシデントや異なる環境で戦う難しさを痛感させられた一戦でもあった。

 様々なトラブルに見舞われたラオス戦において、攻撃陣の活躍に目が行きがちだが、最も難しいタスクを課せられていたのは守備陣だろう。相手にはスピードがある選手が揃っており、格下とはいえ油断は禁物。

 そして、何より大雨の影響を受けたピッチでいかにして守るかは、この試合最大のミッションだった。そうした一戦で素晴らしいパフォーマンスを見せたのが、田中隼人(柏)と菊地脩太(長崎)のCBコンビだ。

 ともに2003年生まれのプロ1年目。U-19代表では6月のモーリスレベロトーナメント(旧・トゥーロン国際大会)でもコンビを組んだ間柄で連係面に不安はない。
 
 だが、この日はピッチコンディションが悪く、ボールのバウンドや止まり方が普段とは異なる。「ピッチの状況を見ながらやっていきたい」と試合前日に田中が話していた通り、セーフティなプレーを意識し、無理にボールを繋ぎにはいかなかった。

「もし(下げて)止まってしまっちゃったらと思って怖かった」とは菊地の言葉。特にGKへのバックパスは、不測の事態を回避するために選択肢から除外していた。

 また、試合前日のトレーニングでは同じく雨の影響でぬかるんだピッチでの練習を余儀なくされていた。守備陣は全体練習後に内田篤人ロールモデルコーチからクリアの手ほどきを受けた点も功を奏した。

「昨日のグラウンドでもボールが止まる場所があった。自分はこんなに雨が降るとは予想していなくて、(昨日の練習でやった時みたいに)それぐらいの気持ちでやろうと。(クリアは)身体で全部止めるぐらいの気持ちでやっていました」と菊地が振り返ったように、事前に経験していたこともプラスに働いた。

 アジアでしか味わえない特異な環境での戦い。そうした経験は血となり肉となる。"アジアで戦う難しさ"を初戦で知れたのは大きいし、所属クラブで出場機会を得られていない両CBにとっては成長スピードを加速させるうえでも大きな意味がある。

 予選はまだ始まったばかりだが、チームにとっても選手にとっても実りある一戦だった。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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