王者の風格を見せたマドリーに“一矢を報いた” 旗手怜央。モドリッチに対抗した経験は日本代表にも大きな収穫【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2022年09月12日 小宮良之

「プレーメーカーとしての発見」とスペイン紙も高評価

マドリー戦で奮闘を見せた旗手(C)Getty Images

 2022-23シーズンの欧州チャンピオンズリーグ開幕戦、王者であるレアル・マドリーは、スコットランドのセルティックの本拠地に乗り込んでいる。
 
 勝負は互角に見えたかもしれない。

 序盤、マドリーは"挑戦者"セルティックの意気盛んな攻勢を受けている。やや危ない場面もあった。なかなか攻め手を作れなかった。

 しかし、慌ててはいない。撓むように攻撃を受け止め、いなし、足を使わせている。前半29分にはエース、カリム・ベンゼマをアクシデントで失ってしまったが、戦いのペースは変わらない。

「自分たちは守りに入ってストレスを感じないからね」
 
 カルロ・アンチェロッティ監督は言うが、セルティックを"攻め疲れ"させていった。
 
 後半になって、セルティックは前半と同じように力を振り絞って攻勢をかけたが、出足は鈍り始めていた。GKティボー・クルトワを追いつめようとしたプレスが、甘くなった瞬間だった。しっかりとつながれてしまい、左サイドのフェデリコ・バルベルデに抜け出される。逆サイドのヴィニシウス・ジュニオールにアーリークロスが通って、ヴィニシウスにあっさり蹴り込まれた。

【動画】「上手すぎる」「エグい」旗手のタックルも及ばず…モドリッチが決めた華麗なアウトサイドシュート

「プレスが少しでもゆるくなって裏を取られた場合、それは失点に直結する」
 
 スペイン国内では、それはマドリーと戦う時の鉄則である。カルロ・アンチェロッティ監督が率いるマドリーは、90分間のマネジメントにおいて相手を疲れさせ、最大限のダメージを与えられる。ボクシングで言えば、堅いガードとKOパンチがあるようなもので、その仕組みが鍛えられているのだ。
 
 マドリーは0-3と完勝。王者の風格だけが浮き彫りになったと言える。

 その王者に対し、「一矢を報いた」と言えるのが、日本代表の旗手怜央だろう。ボランチに入って、ワンタッチで際立ったサイドチェンジなど展開力の高さを披露。CKのこぼれではミドルを枠内に蹴り込み、ノールックのスルーパスを狙い、左を駆け抜け、エデル・ミリトンを慌てさせるクロスを折り返している。バロンドール受賞者であるクロアチア代表MFルカ・モドリッチに、勝てないまでも対抗した。

「プレーメーカーとしての発見」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』も高く評価し、最高点の三ツ星(0-3の4段階評価)をつけたほどだ。

 来るべきカタール・ワールドカップ、日本が世界に立ち向かうことを考えれば、旗手の健闘は大きな収穫になったと言える。最前線で鎬を削ることでしか、得られない境地はある。それが選手を成長させるはずで…。
 
 マドリーのリターンマッチは、コンディションの良い状態でプレーできるなら、古橋亨梧にも注目だ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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