岩政監督は一体何を考えているのか。新スタイル構築中の鹿島は、フタを開けてみないと分からない面白さがある

2022年09月04日 小室功

固定観念にNOを突きつける

鹿島に変革をもたらそうとしている岩政監督。未来に向けた新たなチャレンジを選手たちに推奨し、自らにも課している。写真:徳原隆元

[J1第28節]鹿島2-2浦和/9月3日/県立カシマサッカースタジアム

 新監督の色が随所に見え始めた。

 シーズン途中という難しい局面ながら、鹿島の指揮官にコーチから内部昇格した岩政大樹監督が追求するサッカーは、クラブの伝統にとらわれない新たなスタイルだ。

 むしろ、あえて壊していこうとしているのではないか。Jクラブ最多となる20冠という輝かしい功績を残してきた、これまでの方法論や成功体験に敬意を表しつつも、固定観念にNOを突きつけているようにさえ見える。

「アップデート、バージョンアップ」

 岩政監督は、常々、こう繰り返し、未来に向けた新たなチャレンジを選手たちに推奨し、自らにも課している。

 チームの基盤となるシステムがそもそも異なるのだ。

 鹿島といえば、伝統的に4-4-2がベースだ。古い話になるが、ゼ・マリオ元監督が指揮を執っていた1999年当時、3バックで戦ったことがあるが、機能していたとは言い難く、すぐに4バックに戻した。
 
 トニーニョ・セレーゾ元監督が最初に就任した2000年当時、今では当たり前のように浸透している4-3-3に挑戦したものの、時期尚早だったのか、しっくりせず、早々に断念した。

 30年にわたる鹿島のクラブ史のなかで、変わっていくもの、変わらないものを、時代に合わせ整理しながら進んできたが、「4バック+ダブルボランチ+2サイドハーフ+2トップ」は不変であり、それが鹿島らしさの象徴でもあった。

 だが、変化を恐れない岩政監督に逡巡はない。

 レネ・ヴァイラー前監督が不在中のシーズン開幕当初、監督代行を務めていたときこそクラブ伝統の4-4-2で戦ったが、監督就任後の27節の川崎戦では中盤をダイヤモンド型にした4-4-2、28節の浦和戦では1トップ+2シャドーの4-3-3(もしくは4-3-2-1)でスタートしている。

 川崎戦と浦和戦のスタメンを見比べると、GK以外、フィールドプレーヤー10人は同じだった。だが、立ち位置が違った。
 

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