CLに出ない低迷クラブに強奪されてもマドリディスタは満足。カゼミーロ電撃退団の“違和感”をスペイン人記者が指摘「リーガは日陰の時代を…」【現地発】

2022年08月30日 エル・パイス紙

ベイルのように誰も気に留めないまま去って行った選手がいる一方で…

カゼミーロ(中央)の電撃移籍でモドリッチ(左)、クロース(右)との「CMK」は解体となった。(C) Getty Images

 カゼミーロの退団は、一緒に戦ってきたチームメイトを除いて全ての人たちを幸せにしたそうだ。しかし、その本質を探っていくと、現代サッカーを映し出すいくつかの疑問が浮かび上がる。

 1つ目の疑問は、レアル・マドリーが示した騎士道精神だ。少なくともクラブの発表によると、長年にわたって好パフォーマンスを披露し、5度のチャンピオンズリーグ(CL)の制覇に貢献したカゼミーロは、移籍希望を容認するに値する選手と判断されたらしい。

 だったら何年活躍し、何個のタイトルを獲得すれば、マドリーを去ることができるのだろう? まるで品行方正かつ実績を残せば減刑に値するかのようだ。

 2つ目の疑問は、「CMK」と関係性がある。カゼミーロの売却は、マドリーが誇る不動の中盤トリオ、それもただの中盤ではなく、ひとつのモデルの解体でもある。失われたのはカゼミーロではない。カゼミーロとルカ・モドリッチ、トニ・クロースとの繋がりだ。

 サッカーにおいて記憶を基にプレーできるまでになるには、お金ではなく時間が不可欠だ。カゼミーロはCMKにおいて暗黙のうちに存在する選手だった。その価値を金額で数値化することなどできるはずがない。

 さらにカゼミーロという求心力の源が去るということは、戦力的な損失に加え、ドレッシングルームやピッチ上で構築してきた人間関係やコミュニケーションシステムにも波及するリスクを内包している。ガレス・ベイルのように誰も気に留めないまま去って行った選手がいる一方で、カゼミーロはその対極に位置していた。売却に踏み切るにしても、もっと慎重に対応する必要があったはずだ。

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 3つ目の疑問は、別次元の話だが、同様に憂慮すべきものだ。カゼミーロは今夏であれ、4年後であれ、全ての選手がそうであるようにいずれマドリーを去る運命にあった。この3つ目の疑問は、ラ・リーガと関係性がある。私の違和感の根底にあるのは、カゼミーロの売却に対してファンの間で生まれたある種の幸福感だ。

 それはチャンピオンズカップ5連覇を達成した1950年代後半の伝説のチームに次ぐクラブ史上2番目の黄金時代を築いているマドリーが、欧州屈指の伝統と規模を誇るとはいえ、近年低迷し、今シーズン、CLの舞台に立てないクラブに、不動のMFを2倍のサラリーを提示され強奪されたという事実だ。

 ファンは思いもよらない大金が入ってきたことで祝福するしかなかった。価値観の変化を感じずにはいられない。それがプレミアリーグのパワーであり、ラ・リーガのクラブにはできない浪費が許される所以である。
 

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