【番記者通信】ユナイテッド戦の圧勝が意味するもの|リバプール

2014年03月25日 ジェームズ・ピアース

ダイヤモンド型の中盤はエネルギッシュで機能的だった。

後塵を拝しつづけるばかりだった宿敵ユナイテッドに完勝。リバプールはついにライバルとの力関係を覆した。 (C) Getty Images

 イングランドでもっとも熾烈なライバル関係は、新たな時代を迎えた。アウェーに乗り込んだ30節のマンチェスター・ユナイテッド戦。宿敵を完膚なきまでに叩きのめした3-0の完勝は、立場の逆転を示す大きな勝利だった。

 過去20年間、圧倒的にリーグを支配するユナイテッドのその姿を見上げるばかりだった屈辱の日々は、ついに終わりを迎えたのだ。宿敵の戴冠を13度も見せつけられ、「史上最多のリーグタイトルホルダー」(18回のリーグ優勝)という誇るべき称号までも奪われた恥辱の日々が、だ。

 それにしても、劇的な運命の変転だ。昨シーズンは優勝したユナイテッドに、7位に終わったリバプールは勝点28の大差をつけられた。それが今シーズンは、ここまで2位のリバプールが7位のユナイテッドに勝点14差をつけている。そしてこのまま行けば、リバプールは5年ぶりにチャンピオンズ・リーグ(CL)の出場権を獲得し、ユナイテッドは19年ぶりにそれを逃すことになる。

 リバプールファンが溜飲を下げたのは、ユナイテッド戦での勝ちっぷりが見事だったからだ。リバプールは90分間、質の高いパフォーマンスを見せつけた。成長ぶりを証明するかのように、落ち着き払い、自信がみなぎっていた。唯一残念だったのは、試合を完全に支配しながら3得点に終わったこと。それほど圧倒していた。

 スティーブン・ジェラードの両脇をジョー・アレンとジョーダン・ヘンダーソンが固め、ラヒーム・スターリングをトップ下に置いたダイヤモンド型の中盤は、エネルギッシュで、一体感があり、機能的だった。個々がバラバラで、まるで烏合の衆だったユナイテッドは、文字通り相手ではなかった。

 ファーガソン前監督は、先頃出版した自伝にこう書いている。
「優勝争いをするには、リバプールは最低でも8人の新戦力が必要だ」
 さらに、スティーブン・ジェラードにも言及し、真のトッププレーヤーではないと言い切った。それがどうだ。リバプールはいま、優勝争いの真っ只中にいる。高精度のパスで、決意に満ちたプレーで、ユナイテッド戦を支配したのはジェラードだった。このキャプテンが、プレミアリーグの優勝トロフィーを掲げる――。それほど痛快な戴冠はないだろう。

【記者】
James PEARCE|Liverpool Echo
ジェームズ・ピアース/リバプール・エコー
地元紙『リバプール・エコー』の看板記者。2000年代半ばからリバプールを担当し、クラブの裏の裏まで知り尽くす。辛辣ながらフェアな論評で、歴代の監督と信頼関係を築いた。

【翻訳】
松澤浩三
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