【プレミア現地レポート】フーリガニズム復活の兆候か!? 暴力沙汰頻発のイングランド

2015年09月23日 松澤浩三

モラルに欠けた輩どもによる悪質で卑劣な行為の横行が目立つ。

スタジアム内でどれだけ人種差別反対を訴えても、愚かな行為は増えてる一方であるという。 (C) Getty Images

 2013-14シーズン、サウサンプトン対ウェストハム戦を終えて、懇意にしていたマウリシオ・ポチェティーノ監督(当時サウサンプトン)の通訳とともにロンドンに戻っていた電車内でのことだ。
 
 私たちが乗った電車に、イーストロンドンのアクセントで話す粗野で大柄な白人の男たちが5~6人、乗り込んできた。彼らは、缶ビールを片手に、今まで飲んでいたのであろうパブにいた他の客について、大声で馬鹿にするように話していた。
 
 間もなくしてチャントが始まる。初めはウェストハムについてのチャントで、耳障りとは感じたが、さほど大きな害ではなかった。
 
 しかしその後、グループのなかの20年代前半と思われる若い男2人が、「女はレイプして、黒人は殺す」という耳を疑うようなチャントを公衆の面前で始める。これに周りの男たちも乗っかり、チャントを繰り返した。
 
 彼らのなかには、50~60代の男もいた。他の乗客には、席を離れる人もいて、残った人々は著者を含め、耳にイヤホンをして苦い顔をしている人ばかりだ。
 
 しばらくすると、連中のひとりが何やら隣の女性と話している。そして「おい、こいつコッパー(警察を蔑視した呼称)だぞ!」。女性は「警察だけど非番だわ。だけど、その趣味の悪いチャントを止めないと、あなたたちを逮捕するように同僚に連絡するわよ」と言った。
 
 ロンドンのウォータールー駅のプラットフォームが近づき、警察が車両方面に向かうのを窓越しに見つけた"卑怯者たち"は「あの女、コッパーが呼びやがったんだ」などと吐き捨てるように言いながら、急ぎ足で車両を出ていった。
 
 そのうちの数人は列車を降りたところで職務質問を受けていたが、その後、どうなったかは知る由もない(ちなみに、実際に警察を呼んだのは筆者の横にいた通訳氏で、その後彼は数か月にわたり、証人として警察とのコンタクトを繰り返していた)。
 
 このようにウェストハム・サポーターの柄が悪いのは有名だが、国外で意外と知られていないのが、チェルシー・ファンの素行の悪さだ。
 
 昨シーズン、チャンピオンズ・リーグでパリ・サンジェルマンと対戦するためにフランスの首都に乗り込んだブルーズ・サポータたちの一部が、パリの地下鉄で黒人男性を電車から押し出した動画は、英国のみならず、世界的にも大きく広まった。
 
 その時のチャントの歌詞は、以下のような内容である。
 
「俺たちは人種差別主義だ。そのやり方が好きだ、好きだ、好きだ!」
 
 さらに先日、アーセナルとのロンドンダービー戦後に、こんなSMSが届いた。
 
「スタンフォードブリッジからの帰りに聞いたが、チェルシー・ファンがガンナーズ・ファンを刺して重体になったらしい」
 
 送り主は、アーセナル・ファンの友人だった。翌日のニュースに出ていなかったから、真偽のほどは分からない。しかし、こういったネガティブな事件が、最近になって増えた気がする。

次ページ不満をため込んだ低所得層だけでなく、富裕層の若者の姿も…。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事