吉田麻也は“痛恨のバックパス”から立ち直ることができるか!?

2015年09月22日 松澤浩三

マンU戦の後、吉田は自分への怒りを抑えられない様子だった。

クーマン監督からも、敗因の主要因であると指摘された痛恨のバックパス。互角の勝負を演じていた矢先のプレーだけに、余計に目立ってしまった。 (C) Getty Images

 本拠地セント・メリーズで行なわれたサウサンプトン対マンチェスター・ユナイテッド戦。難敵を相手に前半を終えて1-1とサウサンプトンは善戦し、メンフィス・デパイ対策として右SBで起用された吉田麻也も、守備に徹してまずまずの仕事をしていた。
 
 しかし後半5分。右タッチラインの混戦からルーズボールを拾った吉田は、キャプテンのジョゼ・フォンテが指差す方向に力ないバックパスを出す。
 
 エリア外の、GKが到底たどり着けない場所に転がったボールにすかさず飛びついたマンUのFWアントニー・マルシアルは、GKの動きを見ながら、落ち着いてゴール右隅に流し込んだ。
 
 結果的にこのゴールで勢いに乗ったマンUは、その後追加点を挙げて、アウェーで勝点3をモノにしたのだった――。
 
 試合後の吉田に、「あのバックパスは、どのような判断によるものだったのか?」と質問をぶつけと、彼は自身に対する苛立つ気持ちを押えながら「プレスがかかっていて……、どういった判断ということでもない」と答えるのが精いっぱいだった。
 
 そして、「残りのシーズンで、失った勝点3を、"自分のミスで失った"勝点3を取り返せるように頑張ります。以上」と続け、足早に報道陣から離れていった。
 
 この日本代表CBがイングランドへやってきてから、4年目になる。過去3シーズン、ほぼ毎週、試合後に取材を続けてきたが、吉田があれほど怒気に満ちた厳しい表情を浮かべたのは初めてのことだった。
 
 サウサンプトン移籍以来、2年目以降は常に3番手の位置づけとなっている吉田。しかし、2014年夏にロナルド・クーマンが監督に就任すると、バック4のどこでも任せられるバイプレーヤーとして貴重な存在に成長した。マンU戦でもSB起用も、その守備力が評価されてのものだった。
 
 しかし、痛恨のパスミスで勝点3を献上した戦犯となり、チームに迷惑をかけた自分を許せなかった。それと同時に、長い期間をかけて築き上げてきた信頼を失ってしまったことに対する、やり場のない怒りがあったに違いない。

次ページこれで見放されるほど、指揮官からの信頼は薄っぺらくはない。

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